2008年12月14日(日) 13時58分
友梨さん詐欺 豪遊の果て「5000円でいいから貸してくれ」(産経新聞)
1年半もの高級ホテル暮らしから一転、最後は「5000円貸してくれ」。
平成15年5月から大阪府熊取町で行方不明になっている当時小学4年生だった吉川友梨さん(14)の家族に、4年間にわたって救出話をもちかけては現金を詐取し続けた男女が6日、大阪府警に逮捕された。わらにもすがる思いで家族が支払い続けた金は総額7000万円にものぼる。2人は友梨さんの居場所を調査するどころか、高級ホテルでギャンブル三昧(ざんまい)の生活を送り、最後は自滅した。
「誘拐された弟を助けてくれた事情に明るい人を紹介してあげる」。友梨さんが行方不明になって1年あまりたった16年7月18日、吉川さん宅に女から電話がかかってきた。続けて男から電話で「女性の弟を助けたのは私。友梨さんの居場所はわかっている。会って話をしたい」と誘われた。
結局その日の晩に堺市堺区内の広場で落ち合った。男は「カワカミ」と名乗った。「友梨さんは三重県にいる。行って調べてくるから交通費をくれ」。家族は現金10万円を男に渡した。
この10万円を詐取した容疑で逮捕されたのが、いずれも堺市堺区大浜中町、無職、中谷浩氣(39)と内縁の妻で無職、川上佳代(38)の両容疑者。
中谷容疑者はその後間もなく電話で「友梨さんを保護した」と連絡。「会わせてほしい」と言う家族には「今は精神的に不安定。自分がみているから」と言い逃れた。ぼかして撮影された友梨さんの写真や「九州のテーマパークに連れてきてもらった」と友梨さんが書いたような携帯電話のメールを送りつけてくることもあった。
「生活費がいる」「タクシー代を送ってくれ」。メールで送られてくる要求は次第にエスカレート。家族には「警察は見つけ出せない。身内を疑っている」などと警察に不信感を抱くように仕向けた。家族は約470回にわたってだまし取られ、府警に相談したのは今年10月になってからだった。
2人は詐取した金を湯水のように使い、でたらめな生活を送った。犯行直後に大阪市内や堺市内の高級ホテルで計1年半生活し、500万円以上を支払った。18年4月からは堺市堺区内のマンションに引っ越し。
服装はブランド品で着飾り、移動はすべてタクシー。徒歩15分程度のスーパーへの買い物でさえタクシーを呼び、買い物中は待たせた。満杯にした買い物袋を持って帰り、近所の住民に高級食材を配って歩いて困惑させた。
ギャンブルにものめり込み、昼間はパチンコに熱中。ホテル関係者は「午前中に出て夜遅く帰ってきた。『今日はいくら勝った』とかよく話していた」という。タクシーで馬券や舟券を買ったが、運転手に買いに行かせたこともあった。
マンションに移ったころから、中谷容疑者は近くで貸金業を経営。主に生活保護受給者やタクシー運転手を顧客に、法外な利息で貸した。
返済代わりに顧客にプリペイド式携帯電話や銀行口座を求めたこともあった。中谷容疑者に預金通帳を渡したタクシー運転手の男性は「中谷容疑者から『客から振り込んでもらう通帳が必要だが、住所不定で作れない』と頼まれた」と話す。
逮捕後の家宅捜索では他人名義の携帯電話十数台と預金通帳が押収され、今回の事件の犯行に使用されたとみられる。家族への電話番号はたびたび変わり、振込先の名義人も変わっていたという。
顧客をばかにするなど評判が悪くて客はほとんど来ず、結局貸金業はうまくいかなかった。6月ごろからタクシーに乗る姿はみられず、徒歩や自転車で移動するようになった。マンションの家賃も払えなくなり、約50万円を滞納。逮捕3日前、中谷容疑者は知人に「5000円でいいから貸してくれ」と懇願していた。
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