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2008年12月14日(日) 11時42分

アルゼンチンの女性大統領、夫頼みの政権運営で支持率急落読売新聞

 アルゼンチンのクリスティナ・フェルナンデス大統領(55)が就任から1年を迎えた。

 派手な外見と巧みな弁舌を武器に、世界でも珍しい選挙による夫婦間での政権継承を実現した女性大統領だが、夫頼みの政権運営と政策調整能力の欠如のために、国民から見放されつつある。

 フェルナンデス大統領は、高級ブランド服に身を包み、赤茶色の巻き髪で、女性的な美しさを強調、2位以下に大差をつけて当選した。一時は髪形をまねる中年女性まで現れるほどの人気ぶりだったが、就任後の1月に56%だった支持率は、11月には28%まで落ち込んだ。

 支持率低落の大きな原因は、強引な政治手法で国内に混乱を招いたことだ。

 大統領は、大豆とヒマワリの種の輸出税率引き上げを一方的に発表し、農業団体と真っ向から対立した。対立は4か月に及び、その間、農業団体側は、全国各地で断続的に道路封鎖を行い、穀物の輸出や国内の食糧供給に支障を来した。大統領は結局、税率引き上げ断念に追い込まれた。

 農家は道路封鎖のあおりを受けたうえ、穀物価格の急落や、小麦の干ばつに見舞われ、資金繰りが悪化した。ブエノスアイレス郊外で、小規模農場を営む男性(54)は、「フェルナンデスが争いを長期化させたせいで、収益が落ち込んだ」と怒りをぶちまけた。

 一方、政権運営で夫のネストル・キルチネル前大統領(58)に多くを依存している面も否定できない。大統領は4月、夫の経済成長優先路線の見直しを訴えた経済相を辞任に追い込み、地元メディアから、「前大統領が院政を敷いている」(ラナシオン紙)と批判された。

 最近では、大統領自慢のファッションも批判の的だ。地元誌「ノティシアス」は「外遊先で1日3〜5回衣装を着替え、年間の衣装購入費は、約120万ペソ(約3230万円)」と報じ、「大統領はやりすぎ」と決めつけた。

 キルチネル前大統領はあえて1期で降板し妻を後継に据えた。前大統領には、人気が失速しがちな2期目を避けて妻にバトンタッチし、妻が1期目を終えた後に再び立候補することで、夫婦で長期政権を築く狙いがあったとうわさされている。しかし、現大統領の人気低下で、その狙いの実現は難しくなりそうだ。(ブエノスアイレスで 小寺以作)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081214-00000013-yom-int