JR福山駅前広場整備で12日、福山城の舟入状遺構を埋め戻すなどして地下送迎場を造る方向性が固まった。計画にかかわってきた市民団体や各界には、さまざまな受け止めが広がった。
福山市は当初、舟入状遺構の大半を撤去する形で地下送迎場を整備する予定だった。市が計画を見直すきっかけとなったのは、市民団体「駅前水辺公園プロジェクト」が2007年10月に始め、10万人を超える賛同を集めた署名活動だった。
プロジェクトの三宅国裕代表は、市の提示案を「追手門前の外堀石垣の一部が撤去されるし、舟入状遺構の活用も不十分」と反対の立場を鮮明にする。外堀石垣に水を張って親水公園とする独自案の検討などを引き続き求めていく方針でいる。
市教委、広島県教委と城遺構の取り扱いを協議してきた文化庁の記念物課は「識者でつくる専門委員会や市民レベルの懇談会で意見を聴いた上で、調整した結果と受け止めている。舟入状遺構を埋め戻す市の選択はやむを得ない」との立場を示す。
地下送迎場の造成は、福山商工会議所が04年、駅南口に車両のUターン機能を早期整備するよう求めたのが発端。05年に市が地下送迎場の造成案を公表した。
菅田秦介会頭は「経済活動をより活発に行っていく観点や安全、安心な生活確保をする上で、地下空間を活用した送迎スペース確保は必要不可欠であるとしてきた」と歓迎の意向を示した。
駅前で運行するタクシー約800台が加盟する駅構内タクシー営業会の山田益司会長は「工事で、タクシー乗降場までに高低差がある現状をできるだけ早く解消してほしい」と要望。市身体障害者団体連合会の前川昭夫会長は「地下部分では、案内表示や音声誘導をしっかり備えてほしい」と注文を付けた。