2008年12月10日(水) 21時13分
【友梨ちゃん詐欺】救出願う家族の心情を食い物にした犯行実態(産経新聞)
行方不明になっている大阪府熊取町の吉川友梨さん(14)の救出話を装った詐欺事件で、逮捕された中谷浩氣(39)と川上佳代(38)の両容疑者は、まったく捜索活動をせず、救出を装うなどして家族を信用させていた。4年間にだまし取った7000万円は豪遊やギャンブルで使い果たした。わらにもすがる思いで娘を探してきた家族の心理をもてあそんだ犯行に「なぜ警察に相談してもらえなかったのか。検証が必要だ」と、警察庁幹部も驚きを隠せない。
■生存偽装
「弟も誘拐されたことがある。プロに相談すればいい」。2人が接触を図ってきたのは、友梨さんが行方不明となって1年がたった平成16年7月、父親らが記者会見で有力情報提供者に200万円の謝礼金を出すことを表明した直後だった。
川上容疑者が電話し、中谷容疑者を紹介。「私がプロ。居場所はだいたい分かる」とし、堺市の広場に誘い出した。「三重に最近までいたはず。行って確認する」と、交通費名目に10万円をだまし取った。
その後、要求はエスカレート。「友梨さんを助け出した」「生活費が必要」と数十万単位の振り込みを要求し続けた。家族が会わせてほしいと頼むと「精神的に参っていて帰せない」とうそを突き通した。友梨さんになりすまし、「もう少し時間をかけてから帰る」「九州のテーマパークに連れてきてもらった」とメールも送信した。
父親は土地を売り、学資保険を切り崩して現金を工面した。「身内を疑っている」と吹聴し、警察に相談させないよう仕向けた。
警察庁幹部によると、大阪府警の家族への連絡や配慮には問題がなかったという。役割分担が徹底された手口に、この幹部は「振り込め詐欺を原型とする進化型。通常の振り込めは架空の事件が舞台だが、今回は本当に実在する事件。それだけに卑劣だ」と話す。
■豪遊生活
2人は接触直後から、大阪市内の高級ホテルでの生活を始めた。その後、1泊1万4000円の堺市のホテルに移動。宿泊代は1年半で500万円に上った。
捜索活動はせず、ホテルには連日タクシーを呼び、競馬や競艇、パチンコに出かけた。関係者は「『今日は何万円負けた』とかよく話していた」とする。常に羽振りがよかった。
18年4月からは堺市の家賃月6万5000円の1LDKのマンションに転居した。管理人は「高級食材を差し入れてくれた」とする。ブランド品を身につけ、近所のスーパーやクリーニング店に出かける際にもタクシーを利用、買い物中待たせていた。
2人は偽ブランド品の販売や貸金業で生計を立てていたが、現金を要求し始めてからは「働いている様子はなかった」(住民)。
ただ最近では、資金が底をつき、家賃の滞納が続いて、水道料金も払えなくなり、自転車などでの外出が目立つようになっていた。
■今も沈む家族
父親は現金を要求され始めて以降、ちょっとした情報にも過敏になるなど、精神的に不安定だったという。支援を続ける特定非営利活動法人「あいうえお」の郡山貴裕事務局長は「人の心が分からない容疑者だ」と憤る。
娘が行方不明になり、同じような現金を要求する電話などを受けたことがある拉致被害者、横田めぐみさんの母、早紀江さん(72)は「命のことを言われ、(お金を)持ってこいといわれれば、どうしようかと思う。本当に許せない」と話す。
「心配をかけました」。9日夜、父親は「あいうえお」に短く電話をかけてきた。声は沈んでいた。
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