【シカゴ(米イリノイ州)=白川義和】オバマ米次期大統領の地元シカゴで建具メーカーが突然、工場閉鎖と従業員の解雇を決め、怒った労働者が退職金や手当の支払いを求めて工場内で座り込みを続けている。
「大企業は救済されるのに労働者は見捨てられる」との主張が報道で伝えられると、金融危機に苦しむ人々の間に共感の輪が広がり、オバマ氏も労働者を支持する見解を表明。全米の関心事に発展する事態となっている。
「8年半も働いて雇用は安泰だと思っていたのに突然こんなことになった。誰にでも起きることなんだ」
シカゴ中心部から車で5分。支援に訪れる労働組合員や報道陣でごった返す工場で8日夜、座り込みを続けるダンテ・ワトソンさん(30)が淡々と語った。
会社は今月2日、工場閉鎖と3日後の解雇を240人の社員に突然伝えた。退職金や手当が「取引銀行の拒絶によって支払われない」と聞くと、労働者の怒りが爆発。50人ずつ8時間ごとに交代しての座り込みが5日から始まった。
工場閉鎖は住宅不況に伴う受注減が原因とみられ、法で定められた原則60日前の解雇通知も守られなかった。オバマ次期大統領は7日の記者会見で「労働者の主張は全くその通りだと思う。彼らに起きていることは、この国全体に起きていることの反映だと理解している」と述べた。
現場の情景は、製造業の就業者数がこの半年で40万人以上減った米国の現実を象徴している。労働者の大半は中南米系の移民で、工場内には出荷されないままのドアや窓ガラスが放置されている。組合員減少に悩む労組は存在をアピールする機会とみて、食糧や水、クリスマス用の玩具まで差し入れた。氷点下の寒さのなか、労働者たちは「要求達成まで座り込みを続ける」と気勢を上げた。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081209-206556/news/20081209-OYT1T00670.htm