2008年12月07日(日) 12時05分
株式売却凍結と4分社化見直し 自民党の郵政論議が加速(J-CASTニュース)
郵政民営化の見直し論議が加速しそうだ。日本郵政グループは持ち株会社の日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を2010年度にも上場することを目指しているが、麻生太郎首相が2008年11月19日、「株が下がっている時に、しゃにむに売らなきゃいけないって、そんなアホな話はない」と、株式の売却を凍結すべきだと発言したことが大きな波紋を広げている。麻生首相の発言は「自民党内の郵政見直し論議の本音を代弁している」(政府・与党関係者)と見られる。政府の郵政民営化委員会(田中直毅委員長)は09年春までに具体的な見直し案を首相に提出することになっているが、株式売却問題と4分社化の再編が最大の焦点となるのは間違いない。
■3年ごとに「総合的に見直す」ために議論
日本郵政の西川善文社長は11月28日、首相発言を発端とする株式売却凍結論議について「現行の民営化法で顧客サービスがかつてより低下しているものはあるが、(法改正をしなくても)運用の中で解決が考えられる」と述べ、性急な民営化見直しは必ずしも必要ないとの考えを示した。西川社長は「来春が民営化見直しのタイミングなので、いろんな議論がされている。私どもは現行法に則って、粛々と事業運営を進めていく」と、諦めとも取れる苦渋の表情を浮かべた。
郵政民営化法は郵政民営化委員会が3年ごとに「民営化の進ちょく状況や経営形態について総合的に見直す」と定めている。同委は06年4月の同委発足後、3年を迎える来春に向け、民営化を見直す議論を今年8月に着手したが、年内は関係機関からのヒアリングを行うだけで、「開店休業状態」(関係者)が続いている。このため、政府も日本郵政グループも「当面は自民党内の見直し論議を静観するしかない」というのが本音だ。
自民党内では、次期解散・総選挙をにらみ、「小泉政権が強引に進めた」(与党幹部)郵政民営化を見直す気運が高まっている。それだけに、小泉改革路線を継承しようとする中川秀直元幹事長ら民営化推進グループとの対立が強まっている。麻生首相は株式売却凍結発言の翌20日、「株が安い時に何で売るんだという話をしただけだ」と軌道修正を図ったが、中川元幹事長が「首相の発言は誤解を招く。郵政民営化をひっくり返すことは、我々がやってきたことの全否定につながる」と反発。河村建夫官房長官は「首相は日本郵政グループの国営化を目指しているわけではない。改革をやめるわけではない」と沈静化に動いた。
■日本郵政の再国有化はありえない
自民党内では麻生首相の側近で、前回総選挙で郵政民営化造反組だった山口俊一首相補佐官が代表を務める「郵政研究会」が党内論議を始めたのに続き、園田博之政調会長代理らが郵政民営化見直しのプロジェクトチーム(PT)を発足させた。PTの座長には中谷元・元防衛庁長官が就任。同PTは造反組主導の郵政研究会をけん制する狙いがあるが、いずれも株式売却凍結や4分社化の見直しが議論の俎上に上るのは既定路線となっている。山口首相補佐官はじめ、かつての造反組議員は「さすがに日本郵政の再国有化など誰も考えていない。民営化の枠内で、いかに使いやすく、現実的な見直しを行うかだ」(郵政研究会幹部)と述べており、株式売却凍結や4分社化の見直しが「現実的な選択肢」として、郵政民営化委員会に示される可能性は高い。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081207-00000000-jct-bus_all