2008年12月06日(土) 16時28分
【幸満ちゃん事件】「覚えがあるなら、素直に刑に服して」と祖父(産経新聞)
「この気持ちは簡単に晴れることはないと思う」。成田幸満ちゃんが事件直前までいた東金中央クリニックの院長で、祖父の岡本成通さん(71)は沈痛な表情でこう答えた。
■写真で見る■ 幸満ちゃんの親族が経営する病院には喪中の張り紙が
岡本さんが警察から事件の急展開を知らされたのは、6日朝。午前8時に捜査員が自宅を訪れ、「犯人が決まったわけではないが、任意で事情聴取することになった」と男の名前を告げた。母親で同院看護師の多恵子さん(38)に警察は「犯人は近くにいる。捕まえます」と話していたため、予感はあったという。
岡本さんは、まさかとの思いから過去のカルテをめくった。皮肉にも2年前と5年前の2度にわたって、皮膚科の受診にきた男の治療を自らの手で行っていたのだ。だが、記憶をたどっても「全く印象がなかった」。
警察から報告を聞いてまず、幸満ちゃんの墓前に線香を供えた。全容解明は始まったばかり。「これからゆっくり報告してあげたい」。
幸満ちゃんへの思いについては、「これからも(天国で)元気に…」と声をつまらせ、目に涙をにじませ、「明るくと飛び回ってほしい」と絞り出すように話した。
男に対しては「もし覚えがあるなら、素直に刑に服してもらいたい」と語った。
岡本さんは少しの休みを挟んでほぼ通常通り診療を続けた。「普段から感情を外に出さない先生だったが、事件後も穏やかさを保たれ、心が痛んだ」と女性患者(40)。6日もひっきりなしに患者が訪れた。少しこわばった様子の職員らに対して「岡本先生は何ら普段と変わることなく診察していたが、事件の進展を告げる報道ヘリの音を耳にすると、看護師さんと顔を見合わせ、ほんの少しだけ笑顔を見せた」(別の患者)という。
だが、多恵子さんについてはどの患者も「見かけない」と首を振り、岡本さんも「深く話していないが、気持ちは私と同じ。けりがつけば心の重みも軽くなると思う」とだけ話した。
幸満ちゃんと暮らした自宅マンションも応答はなく、ひっそり静まりかえっていた。
「喪中のため新年の挨拶は控えさせていただきます」。同院玄関には、そう張り紙されていた。「本年九月に幸満が永眠いたしました」との文言の後には、多恵子さんと岡本さんの尽くせぬ思いを代弁するかのように“天使”の笑顔をたたえた幸満ちゃんの写真が添えられていた。
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