2008年12月05日(金) 00時00分
「麻生さん=KY首相」資質疑問視する風潮広がる(読売新聞)
「KY首相」−−。
週刊誌などが麻生首相をこう呼び始めたのは、首相が「未曽有(みぞう)」を「みぞうゆう」などと漢字の誤読を連発した11月中旬からだ。本来の「空気(K)が読(Y)めない」に、「漢字が読めない」をひっかけた呼び名だ。
自民党職員は嘆く。
「あれで『何だ、漢字も読めないのか』というふうに、麻生さんの首相としての資質を疑問視する雰囲気が生まれてしまった」
漢字の誤読を機に首相をからかう風潮が広がり、別の「KY」の冠をつける呼び方も出始める。「解散もやれない」「経済がよくわからない」……。
「(医師は)社会的常識が、かなり欠けている人が多い」との首相の失言に対し、日本医師会の中川俊男常任理事は3日の記者会見で語った。
「首相はKY。国民感情が読めない。医療関係者は本当に怒ってますよ」
◆統治能力◆
首相の「統治能力」を疑問視する声も増えた。
11月下旬、国会内の自民党控室を訪れた公明党の太田代表は目を疑った。会期延長をめぐる大島理森・自民、漆原良夫・公明の両国対委員長の話し合いに岡本全勝・首相秘書官が同席していたからだ。岡本氏は、首相が総務相時代に総務省総務課長などで仕え、首相が事務の首相秘書官に抜てきした人物だ。
「歴代政権では、政治日程についての与党との連絡役は政治家の官房副長官が担ってきた。いくらなんでも官僚の本来の分を越えているし、そんなことを許す麻生さんも麻生さんだ」と自民党のベテラン議員はまゆをひそめる。
事務の首相秘書官は財務省(旧大蔵省)が取り仕切るのが慣例だった。だが、財務省出身者より入省年次が3年上の岡本氏の起用で慣例が崩れた。この人事が引き金で財務省が麻生政権に様子見の姿勢になったのではないか、との観測も与党内には強い。定額給付金をめぐる混乱も、「財務省が真剣に政権を支える意欲を失ったために起きた」との見方がもっぱらだ。
首相補佐官の山口俊一衆院議員は最近、財務省側に「岡本さんより年次が上の人を秘書官として官邸によこしたらどうか」と持ちかけた。が、回答は「局長クラスを出すことになり、出せる人間がいない」とつれなかった。
麻生派議員は嘆く。
「麻生さんは『選挙の顔はオレ一人で十分』と過信していた。河村建夫官房長官も松本純官房副長官も、単に選挙区で有力な対抗馬がいないという理由だけでポストにつけた。政権への風向きが変わったとたん、官邸が機能しなくなった」
◆深まる傷◆
甘利行政改革相は首相に対し、「長期戦の構えで、実績を積み重ねて、好機が訪れるのを待つしかない」と繰り返し助言している。首相周辺は「反転攻勢をめざし、内閣改造を断行する手もある」と語る。
だが、自民党のベテラン議員は「改造したら、外された閣僚は落第のレッテルをはられたようなものだ。選挙を間近に控え、党内に敵を作るだけだ」と、早期改造の効果に懐疑的だ。
自民党は安倍、福田と2代の総裁が続けて政権を途中で投げ出した。「自民党ブランド」を回復する役回りを期待された首相も、失言の連発や統治能力の欠落を露呈し、傷をさらに深めた格好だ。
「ボクは自民党の役割は終わったと思う」
ジャーナリストの田原総一朗氏は4日昼、首相官邸で首相と面会した際にこう直言した。「自民党の役割は三つあった。日本を共産主義国家にしない。欧米並みに豊かな国にする。対ソ連の安全保障。でも、どれも終わっちゃった」
田原氏の指摘に、首相は「そうだな」とうなずくだけだったという。
反転攻勢の糸口をどうやってつかむか。首相の悩みは深い。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081204-00000075-yom-pol