記事登録
2008年12月05日(金) 07時07分

麻生政権 機能不全のワケは… 東京新聞

 米国で「ハネムーン期間」と呼ばれる政権発足100日にもならないうちに、迷走を重ねている麻生政権。2009年度予算編成の基本方針をめぐって財政健全化路線からの転換を図る過程でも、政府・与党の機能不全は続いた。原因は麻生太郎首相自身の発言にもあるが、調整役不在によることは明らかだ。 (清水俊介)

◆引き立て役

 「本格的に政権運営やることになっちゃったからね」。与党幹部はこう漏らす。

 今の内閣と自民党執行部の顔触れは、首相が、就任直後の衆院解散・総選挙を前提として選んだ陣容だ。内閣では「選挙の顔」となる首相さえ目立てばいい。

 細田博之幹事長も河村建夫官房長官も「首相の引き立て役となる、地味で軽量級人事」とやゆされた。首相は、組閣直後は初入閣の閣僚に「これで選挙を頑張れ」とささやいたほどだ。

 本来、縁の下の支え役になるはずの側近は、中川昭一財務相、甘利明行革担当相のように花形ポストに就いた。自民党の菅義偉選対副委員長は留任したものの、政権を日々切り盛りする中枢ラインに側近と呼ばれる人物は見当たらない。党務経験がほとんどなく、官邸入りさえ初めての河村氏が調整役を十分に果たせないなど「選挙シフト」が解散先送りで裏目に出た。

◆場当たり

 不慣れな政権運営に当たる中枢ラインでは、場当たり対応が目立つ。(1)公共事業の前年度比3%削減(2)社会保障費の自然増分二千二百億円を抑制−との予算編成方針を〇九年度は凍結することに関しても、党執行部の足並みの乱れが露呈した。

 笹川尭総務会長は二日の総務会で、歳出削減路線の見直し要求が相次ぐと、その場で「シーリング(概算要求基準)の撤廃を総務会として了承する」と宣言。

 直後の記者会見で、党四役がそろって首相に申し入れると言い切った。

 これに慌てたのは保利耕輔政調会長。党の政策は、総務会の前に政務調査会の決定を経るのが習わしだが、政調はシーリングの扱いについて協議途中だった。保利氏は申し入れに難色を示し、結局、笹川氏が一人で総務会の意見として凍結要求を首相に伝える羽目に。

 これには党内若手も「(調整役の)幹事長は一体何をしていたんだ」とあきれ顔だ。

 政権発足二カ月余りで「内閣改造人事をするわけにもいかない」(与党幹部)との事情もあり、麻生政権は機能不全に打つ手も見当たらない。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008120590070749.html