2008年12月05日(金) 08時31分
フレッツ光、ソフトバンクが販売へ 通信各社、メンツより実利(フジサンケイ ビジネスアイ)
ライバル関係にある通信企業の間で、提携の動きが加速している。PHSのウィルコムがNTTドコモの回線を借りてデータ通信サービスを来春にも開始するほか、4日にはソフトバンクがNTTの光回線販売の代理店契約締結に向けた交渉に入った事実が明らかになった。通信市場の伸びが鈍化するなか、独自路線にこだわるよりも、他社のインフラや販売網を活用し、相互の収益増を図る方が得策との判断が働いているためだ。
ソフトバンクはNTT東日本・西日本が展開する光回線サービス「フレッツ光」を、自社の販売ルートで代理店として拡販する計画。実現すればADSLや光通信などの固定回線サービスで、激しい争いを演じてきた両者に協力関係が生まれる。
さらに4日には、ADSLサービス「ヤフーBB」を展開するソフトバンクBBが、NTTデータが開発した法人向け業務支援システムの代理店販売を開始したと発表した。
今月にはウィルコムがNTTドコモの回線を借り、来春からデータ通信サービスを開始することが明らかになっている。ウィルコムは来春導入する高速無線通信「次世代PHS」で、サービス開始が遅れる地方向けに、ドコモ網を使ったデータ通信サービスを展開する考えだ。
固定では、ADSL市場の縮小が進み、光回線も鈍化。移動通信も携帯電話の普及台数が1億を突破し市場が飽和状態で、新規の契約獲得が困難な状況になりつつある。
さらに景気の悪化によって、市場環境は今後厳しさを増すとみられている。そのため各社は、すでに幅広く構築されているNTTのインフラなどを活用して事業を展開した方が、効率良く収益化が図れるとの判断がある。回線を貸し出す側にも、他社の販売網を活用できるメリットがある。
総務省も企業間の連携を後押ししている。同省は大手の通信企業のインフラを、他社が借りられるMVNO(仮想移動体通信事業者)制度を推進。ウィルコムの場合も、MVNO制度を利用する計画だ。KDDIなど他の大手の通信事業者に対し、他社が回線を借りやすいよう標準的な貸し出し料金の明示を求めるなど、MVNO制度の活用をさらに活性化させる構えだ。
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【予報図】
■効率化で業界再編の芽
市場縮小とサービス競争が同時並行で進むなか、低迷する自社事業を終了して他社サービスの販売に切り替えたり、莫大なインフラ投資を避けるために他社回線を借りて事業を展開するようなケースは、今後さらに増加するとみられる。
ただ、ソフトバンクによるNTTの光回線サービス販売のように、シェアの小さい企業による事業見直しの動きが強まれば、大手による市場の寡占化が進むという懸念もある。
今後は、各社が低迷する事業を売却するなどの動きも広がる可能性もある。こうした状況に発展すれば、大手を中心とした業界再編につながることも予想される。(黒川信雄)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081204-00000013-fsi-ind