2008年12月01日(月) 11時45分
長谷川洋三の産業ウォッチ トヨタ名誉会長:気になる米国世論の動向(J-CASTニュース)
■「米国における自動車産業の位置は非常に大きい。米ビッグスリーのどこかがつぶれるようなことがあれば関連企業や地域に与える影響は大きいので、オバマ新政権はしっかりささえて欲しい」
トヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長(日本経団連名誉会長)は2008年11月25日、東京・虎ノ門のホテルオークラで開かれた故徳増須磨夫三井住友海上火災保険相談役(元住友海上火災保険社長)のお別れ会で米国自動車業界について聞いた私にこう語った。米GM(ゼネラル・モーター)のワゴナー会長との会談を断ったという噂が一時流れたが、「そんな事実は断じてない」ときっぱり。GMとは合弁会社を作るなどの関係もあるだけに同情心はある。
ただ豊田名誉会長も気になるのは米国の世論の動向。GMなど米ビッグスリーは米上下院で開かれた公聴会で多額の政府緊急融資を要請したが、ギャラップなどの調査によると米ビッグスリー救済に賛成する声と反対する声はほぼきっ抗しており、必ずしも救済すべしとの世論で固まっているわけではない。オバマ次期米大統領もガートナー次期財務大臣など経済閣僚発表の会見で、「自動車業界にはきちんとした再建計画を提出してもらう」と厳しい注文を付けた。
日本経団連の御手洗冨士夫会長は25日の定例会見で「(米当局による)シティ支援の決定はよかった。金融は世界に広がっているので安全は重要だ」と指摘したものの、米ビッグスリー救済はむずかしい問題だ。規模は大きいが世論もある。どういう形で政府支援をやるかははっきりしていない。プランが出れば議論は深まるだろう」と語るに留まった。日本の財界はトヨタ自動車に代表される自動車業界とともに対外発言力を強めてきたが、米国市場の縮小とともに自動車業界本位主義も揺らいでいる。米ビッグスリーは1年以内にいずれかが破局するという最新レポートも発表されたばかりだが、その行方は日本の自動車業界にも少なからぬ影響を与えそうだ。
【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。
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