2008年11月30日(日) 00時31分
被害者参加制度に期待 遺族「納得いくまで質問させて」(産経新聞)
12月から刑事裁判でスタートする「被害者参加制度」。大阪府寝屋川市のコンビニエンスストアで昨年10月、万引した少年に刺殺されたアルバイト店員の上内健司さん=当時(27)=の父、勇一さん(58)が産経新聞の取材に応じ、被害者の遺族として制度に期待する思いを語った。
この制度によって、被害者や私たちのような遺族が、被告人に直接質問する機会がやっと与えられることになる。裁判員制度をはじめとする一連の司法制度改革によって、被害者や遺族の思いを伝えやすくなっていることは間違いない。
息子が殺された事件以降、私は生まれて初めて人を心底憎んだ。そして息子の命を奪った被告人には、「自分の命で償ってほしい」と強く願った。せめて、「なぜ息子を殺したのか」「なぜ殺害を思いとどまることができなかったのか」、1日も早く知りたいと思った。
だから遺族にとっては、初めて被告人と会える法廷は特別な場所だ。今年2月、その場所に初めて入り、息子の遺影とともに裁判を傍聴して、改めて被告人への憎しみが増幅した。これまでの公判で、被告人は殺意を否認し、検察官が被告人質問で動機などを尋ねても「忘れました」「わかりません」などと繰り返した。真の反省の態度がうかがえず、悔しい思いをした。
私の場合、遺族として法廷での意見陳述が許された。「深い悲しみと怒りは今でも増している。犯人は悲しむ家族のこと、人間の命をどう思っているのか。健司の命を返してほしい」と訴え、厳罰を求めた。だが、被告人に直接、本心を問いただすことはできず、「なぜ殺したのか」という最も知りたいことはあいまいなままで終わった。
被告人は刑を軽くするために言いたいことをいくらでも言えるのに。一番つらい思いをしている遺族が裁判でいかに蚊帳の外に置かれていたかを実感した。
3日間連続開廷を含む計5回の集中審理の形で行われたため、審理はあっという間に終わった。まるで流れ作業のように段取りよく被告人質問や証人尋問が行われ、判決が言い渡された。「たったこれだけの審理で決めてしまうのか」と、息子の命が軽んじられたような思いが残った。
だから被害者参加制度に期待している。遺族が納得のいくまで被告人にさまざまなことを聞かせてほしい。被告人が真実を語るまで続けさせてほしい。そうなれば、たとえ事件の傷から立ち直ることまではできなくても、精神的な苦痛を和らげてくれる一助になるのではないだろうか。
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