犯罪被害者や遺族が加害者の刑事裁判で被告人質問したり、求刑意見を述べたりする被害者参加制度が十二月一日、改正刑事訴訟法の施行に伴いスタートする。参加するのは、同日以降に順次起訴された改正刑訴法規定の対象事件に限られ、起訴から実質審理開始までの期間などを考えると、実際に被害者らが法廷に立つのは早くても年明けになりそうだ。
被害者らの参加で、従来の法曹(裁判官、検察官、弁護士)と被告による刑事裁判は大きく変わる。また来年五月に裁判員制度が始まり、刑事司法改革はさらに進む。
改正刑訴法によると、参加制度の対象事件は殺人、傷害致死など故意の犯罪で人を死傷させた罪のほか
被害者や遺族、その代理人弁護士は、まず検察官に参加の意思を伝え、検察官から通知を受けた裁判所が事件の性質などを考慮した上で、許可するかどうか判断する。
被害者や遺族は法廷で「被害者参加人」と呼ばれ、検察官の横に座る。求刑意見などを陳述するのに必要な範囲内で被告人質問するほか、有罪の場合の量刑で考慮される情状に関して証人尋問もできる。検察官の論告・求刑後の意見陳述で、起訴事実の法定刑の範囲で“論告・求刑”する。
被害者らが法廷で強い不安を覚える恐れがあるときなどは、裁判所の許可を得て付添人を同席させたり、被告との間を遮へいすることも可能だ。
法務省によると、被害者参加の裁判は一審が中心になるとみられる。
また改正刑訴法と同時に施行される改正犯罪被害者保護法には、被害者らが被告に損害賠償請求をする場合、民事訴訟を起こさなくても、刑事裁判の中で賠償請求できる「付帯私訴」が盛り込まれた。被告が有罪なら刑事裁判の裁判官が公判記録などを利用して賠償額を決める。
被害者参加制度と付帯私訴は、二〇〇五年十二月に閣議決定された犯罪被害者等基本計画に基づく支援策の大きな柱。