2008年11月30日(日) 08時04分
中露、APECの裏で外交合戦 中南米に影響力確保(産経新聞)
【ロサンゼルス=松尾理也】ロシアのメドベージェフ大統領は28日、キューバ訪問を終え、アジア太平洋経済協力会議(APEC)ペルー会合に続く中南米歴訪を締めくくった。中国の胡錦濤国家主席もAPECの前に、キューバを含む中南米歴訪を行っている。ブッシュ米大統領が最後の外交舞台として精魂を傾けたAPECだが、むしろ中露両国がこれを機に、“米国の裏庭”中南米への影響力拡大の意図をあらわにする結果に終わった。
現地からの報道によると、メドベージェフ大統領は27日、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長と会談。28日には病床のフィデル・カストロ前議長とも会談し、冷戦後に冷え込んだ両国関係の改善ぶりをアピールした。
今月22、23の両日にペルーの首都リマで開かれたAPEC首脳会議の後、メドベージェフ大統領はブラジル、ベネズエラ、キューバと精力的に訪問をこなした。ベネズエラでは強硬な反米左派チャベス大統領に加え、首都カラカスに集まったニカラグアのオルテガ大統領やボリビアのモラレス大統領らとも会談し、中南米の「反米陣営」とのきずなを強めた。こうした日程について、メドベージェフ大統領はキューバでの会見で「ロシアは中南米に戻ってきた」と満足げに振り返った。
一方、胡主席はAPEC前にコスタリカ、キューバを歴訪。さらにペルーとも自由貿易協定(FTA)を締結するなど、積極的な動きを見せた。ロシアが中南米に広がる左派政権とのつながりを重視する姿勢を見せたのに対し、中国はあくまで経済優先。狙いは「世界の工場」としての自国の成長を支えるための資源獲得だった。
冷戦時代、中南米では米ソが「チェス盤」と例えられるほど熾烈(しれつ)な勢力争いを繰り広げた歴史もある。その地域で繰り広げられた今回の中露両国の動きは、ブッシュ大統領が事実上外交の表舞台から退場する節目と重なっただけに注目を集めた。英誌エコノミストは「新たな冷戦が始まったと考える人々に、一定の論拠を与えるような動きだった。中露双方ともAPEC出席は(本来の目的である)中南米歴訪の格好の口実となった」と分析している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081130-00000046-san-int