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2008年11月29日(土) 21時01分

<インドテロ>商都に深い傷跡「インドの9・11だ」毎日新聞

 インド軍特殊部隊は29日、武装グループが立てこもり最後まで抵抗を続けたタージマハル・ホテルを制圧。地元メディアが「インドの9・11(米国同時多発テロ)」と呼ぶ、イスラム過激派によるとみられる同時多発テロ事件は、ひとまず幕を閉じた。だがホテル内には多数の人質とみられる遺体が散乱。地元住民は「テロリストがまた襲ってくるのではないか」と不安を募らせる。綿密に準備を重ねたうえで、重武装で突入し人質を取るという、インドでは過去に例のない凶行は、同国最大の商都ムンバイに深い傷跡を残した。【ムンバイ(インド西部)矢野純一】

 「遺体がいくつも転がり、地獄のようだった」。29日、特殊部隊による武装グループ制圧が完了したタージ・ホテルに入った救急隊員は、ため息をついた。

 同ホテルで救出された英国人は、米テレビに「彼らは笑いながら銃を撃ってきた」と証言。英BBCテレビによると、特殊部隊は突入した部屋で30人の遺体を発見した。

 武装グループは、遺体の口の中に手投げ弾を押し込み、動かすと爆発するなどの罠(わな)を仕掛けており、遺体搬出に手間取っている。

 29日未明から始まった最後の掃討作戦で、部隊は一部屋ずつ安全を確認しながら武装グループに接近。だが自動小銃AK47と手投げ弾、拳銃で武装したグループの抵抗は予想以上に激しかった。

 午前7時過ぎ、部隊が最後の突入を図った。ホテルは下層階が猛烈な炎に包まれ、爆発音や銃声が鳴り響く。だが30分ほどでそれも収まり、武装グループ全員の殺害、ホテルの完全制圧が宣言された。

 ホテルの周辺はガラス片が飛び散り、焼け焦げた木片や、石壁の破片が散乱していた。ホテル脇に立つと建物から、かすかな血のにおいがする。

 武装グループと部隊の激しい攻防が行われた2階の窓枠は黒焦げで、天井のパイプがグニャリと曲がる。4階や5階からは、宿泊客が脱出するために結んでつなげたシーツやカーテンが垂れ下がったままになっている。

 事件の解決を知り、ホテル前の広場には多くの市民が集まり始めた。中には、待機する特殊部隊の隊員に、バラの花束を渡したり、「ヒーローだ」と握手を求める市民の姿も見られた。

 近くに住むアッバスさん(50)は「住民はテロリストがまた、襲撃するのではないかと恐れている。街ではそういううわさが広がっている」と話した。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081129-00000086-mai-int