2008年11月28日(金) 00時30分
襲撃現場の邦人観光客「まさか銃撃…、物置に隠れた」(読売新聞)
観光客でにぎわう繁華街は、一夜のうちに墓場に変わった。インド西部の商業都市ムンバイで26日夜(現地時間)に起きた同時テロ。一夜明けた27日になっても、一部のホテルでは武装勢力の立てこもりが続き、8人の日本人が閉じ込められたままだ。
市街地には、白い布に覆われた被害者の遺体と、泣き崩れる関係者、銃を手にした兵士らの姿があふれ、現地からは「テロが許せない」と悲痛な叫びが上がっている。
ムンバイの人気スポット、レオポルドカフェに、大阪市出身の三品有紀さん(27)が足を踏み入れたのは現地時間の26日午後9時45分ごろだった。1階が欧米人客などで混雑していたため、インド人店員に2階に案内された直後、階下から「ダダダ」という発砲音が聞こえた。「花火かと思った。まさか銃撃だなんて。案内してくれた店員も亡くなったようです」と声を詰まらせた。
2階にいた15人くらいの客と一緒に店内奥の物置に隠れ、犯人グループが上がって来られないよう、1階から2階に続く扉に鍵をかけた。銃撃音が止み、階下に降りた時には、店内はガラスの破片や薬きょうなどが散乱していたという。
すぐ近くのタージマハールホテルからは、「ヘルプ、ヘルプ」という叫び声が聞こえ、上階から駆け下りる男性客の姿も見えたという。三品さんは、「安全になったらすぐに出国したい」と声を震わせた。
同ホテルから約2キロ離れた繁華街の一角に住む日本語通訳、ギータ・ナアヤルさん(66)は「ボーン」という花火のような音とともに地響きを感じた。外に出ると、ホテルの屋上からもうもうと煙が上がっているのが見えた。
自宅の約500メートル先のガソリンスタンドでも爆発があり、通りは銃を持って歩き回る警察官や兵士の姿があふれているという。「普段は観光客でにぎわう繁華街が墓場のようになってしまった」と、ナアヤルさんは沈んだ声で話した。
タージマハールホテルから数百メートル離れたホテルに宿泊していた会社員女性(41)は26日夜から27日にかけて、30分から1時間起きに続く爆音に、眠れなかったという。「外出もできず、ホテルの部屋でテレビを見る以外に情報がない」と不安がった。
朝になると、市内の通りは、白い布に覆われた被害者の遺体を担ぐ何十人もの列が続いた。現地で30年以上活動を続ける日本山妙法寺住職の森田捷泉(しょうせん)さん(60)は葬送の列に何度も出くわした。沿道の人たちは花のつぼみをちぎっては投げていた。合掌して葬送の列を見送ったという森田さんは「テロというよりも戦争だ。罪もない人を殺害するなんて許せない」と憤った。
市街地から離れた地域でもテロによる死者が出ており、緊迫した空気が広がっている。中心部から約20キロ離れた知的障害者のための学校で働く中出敬子さん(71)によれば、政府の命令で学校は閉鎖された。中出さんは「これまでもテロ事件はあったが、外国人が狙われるなんて聞いたことがない」と不安そうに話していた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081128-00000000-yom-int