2008年11月25日(火) 23時46分
最高裁新長官に就任した竹崎博允さん 「これからは物差しをセンチメートルに」(産経新聞)
「これからはミリメートルのモノサシをセンチメートルに持ち替えないと、一般の人はついてこられない。それでも長さはちゃんと測れるのだから」
裁判員制度の開始に向けて裁判官に呼びかける。数多くの証拠を法廷で詳細に調べるのではなく、絞り込まれた証拠で裁判員に判断を求める新制度での、発想の転換を促す。
最高裁判事を経ずに、長官就任という異例の抜擢(ばってき)。「戸惑いと重責、重圧にもなっている」と表情は厳しい。
それでも、「裁判員制度に(準備の)発端からかかわってきた経験を生かし、適切なスタートを切って軌道に乗せる」と、自負ものぞかせた。
東京地裁判事として、オウム真理教幹部の公判で裁判長を務める一方、裁判所の警備や広報も取り仕切った。傍聴券を求める行列が、道路にはみ出て事故にあうなどのトラブルがないように日比谷公園を借りた。傍聴券の抽選は、スピードアップのため、くじからパソコン抽選に改めた。いつも司法に向けられる国民の目を意識してきた。
当然法学部の出身だが、思考パターンは“理系”だ。「仮説を立ててデータを集め、多角的に分析して、冷静で合理的な結論を導き出す」。仕事でもデータ管理を重視し、「厳密な自然科学的推論は法律をやる上でも必要。言葉の持つ曖昧(あいまい)さも気になる」という。「感じとか印象とか、曖昧な報告はダメ。『数字が物語る重み』をいつも指摘される」とは、ある部下の評だ。
25日の就任会見では、大法廷だけでなく、通常は長官がかかわらない小法廷の審理にも関与したいとの思いも明かした。
「最高裁判事を経ずに選任されたので、日常の業務の経験も積んでおきたい」
データや実績を積み重ねる緻密(ちみつ)さが、ここにも表れているようだ。(酒井潤)
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昭和19年7月8日生まれ。岡山県出身。東大卒。昭和44年判事補。おもに刑事裁判を担当し、陪審制度研究のための渡米したほか、最高裁経理局長や事務総長として、司法行政の中枢で裁判員制度にかかわる。名古屋高裁長官を経て平成19年2月から東京高裁長官。定年の70歳まで任期は約5年7カ月。
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