ペルーで開かれたアジア経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて中南米を外遊中の中国の
十九日、胡主席は首都リマに到着すると、ペルーのガルシア大統領とともにオープンカーで市内をパレード。閣僚が出迎えただけの麻生太郎首相への対応との落差に、日本の外交官も「扱いが随分違う」と驚いた。
中国はペルーにとって、投資してくれる「お客さま」。今回、両国政府が合意した事業は中国企業が株式の60%を保有するペルーの銅山に中国の銀行が出資、技術も金も中国から持ち込む内容だ。中国社会科学院ラテンアメリカ研究所の江時学所長は「ペルーは資源はあるが開発資金がない」と指摘する。
中国は急速な経済成長で銅消費が過去五年間で87%増。世界中から輸入し、世界の消費量の五分の一を占める。銅、銀など鉱物資源の宝庫ペルーには、中国の鉄鋼や石油企業も進出。経済成長の維持には資源の安定供給が欠かせないからだ。
コスタリカ訪問では、将来の同国からの輸入を視野に入れ石油の精製所建設協力に、キューバではニッケルの購入契約にそれぞれ合意。中南米を新たな資源調達地として重視している。
二〇〇四年、中国は一〇年までに中南米との貿易規模を一千億ドル(約九兆六千億円)に拡大するとの目標を掲げたが、〇七年にわずか三年間で達成。今年一—九月期の中南米との貿易額は前年同期比52%増で、中南米諸国にとって中国の重要性は増す一方だ。
ただ打撃を受けた中南米諸国の国内産業の反発も強い。一九九六年から〇六年までの中南米諸国の対中反ダンピング措置は百三十五件で、対中発動の三分の一に達した。
このため中国は安定した経済貿易関係を維持しようと、各国と自由貿易協定(FTA)締結を推進、首脳訪問で「政治的な信頼関係の構築」(中国紙)を狙っている。(リマ共同=塩沢英一)