2008年11月22日(土) 01時37分
政府、公取委人事で失態 慣例うのみ、調査せず(産経新聞)
政府が公正取引委員会委員の国会同意人事案を衆参本会議採決当日の21日に撤回するという失態は、政府内に巣くう前例主義と形式主義が招いたものだ。公取委では事務官僚トップの事務総長が退職後、「いったん別の組織に再就職し、後に公取委の委員となることが半ば慣例化」(国会関係者)していた。与党は公取委が選任した政府案をうのみにしていた。公取委側は野党側から問題の指摘があった後の20日の段階でも与党に「問題ない」と説明し、事態をごまかそうとしていた。(佐々木美恵)
「こんな問題があるぞ。取り下げなくて大丈夫なのか」
公取委員の国会同意人事案の採決を翌日に控えた20日夜。東京・赤坂の衆院副議長公邸で開かれた河野洋平衆院議長の在任最長記録達成の祝賀パーティーで、野党幹部が自民党の国対幹部の1人に、法律解説書の宣伝チラシのコピーをちらつかせた。
公取委員候補の上杉秋則・元公取委事務総長が弁護士ではないのに肩書を弁護士とした“詐称”の証拠となる文書だったという。
自民党国対幹部は文書をよく読めなかったものの、あわてて上司にあたる幹部に連絡したが「大丈夫だよ」との返事が返ってきた。
公取委の松山●(=隆の生の上に一)英事務総長が同日夕から自民党の衆参国対幹部を訪ね、「上杉氏自身が肩書を騙(かた)ったのではなく出版社が勝手にやった」と説明。「ペンネームだったし、問題ない」と結果として事実と異なることを語っていた。
だが、21日午前8時半、自民党の大島理森国対委員長はがく然とした。竹島一彦公取委員長が持参した法律解説書のチラシにはタイトルの下に上杉氏自身の実名と「弁護士」との虚偽の肩書が印刷されていた。
「言い逃れはできない。身内だから調べが甘かったんじゃないか」
大島氏は竹島氏を叱責(しつせき)し、上杉氏の人事案撤回を決めざるを得なかった。
民主党は19日ごろから、上杉氏が弁護士資格をもたないのに「弁護士・大野金一郎」のペンネームで論文を執筆していたのではないかと問題視していた。「公取委が取り締るべき不当景品類および不当表示防止法違反にあたる。委員なんてとんでもない」(幹部)との声が出ていた。
そこへ、共産党の穀田恵二国対委員長が法律解説書のチラシを民主党国対などへ持ち込み共闘をはかったことがダメ押しとなった。
首相官邸や与党は、自らの調査ミスは棚にあげ、公取委に「冗談じゃない」(政府高官)と怒り心頭だ。河村建夫官房長官は21日午後の約25分間の会見の大部分で釈明に追われた。
竹島氏は21日、謝罪のため2度にわたって首相官邸に現れた。最初は、声をかけた記者団に「なにぃ!」と大声を張り上げたが、官邸を去る際には「まああの…申し訳ありませんでした。調査の仕方があれば教えていただきたい。難しい」と低姿勢だった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081122-00000507-san-pol