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2008年11月22日(土) 00時00分

《1》模擬裁判 わかりやすさ重要読売新聞

模擬裁判で行われた評議の様子(19日午後、富山地裁で)

 検察側は冒頭陳述で、「被害者の命を奪った」「危険と知りつつ飲酒運転した」など、罪を裁くのに重要と考える要素を強調した。これに対し、弁護側は「謝罪、反省が深い」「示談が成立している」と主張。双方とも、裁判員制度のため、検察、弁護双方の背後の壁に備え付けられた大型スクリーンに論点を映し出し、主張を見て分かりやすいよう工夫したのが大きな特徴だ。

 富山地裁で18日から20日まで開かれた裁判員制度の模擬裁判。男性(49)が飲酒運転をして正面衝突事故を起こし、対向車の男性を死亡させ、危険運転致死罪に問われたという想定で、3日間かけて行われた。

 県内の法曹3者は制度開始を見すえ、3年前から模擬裁判を開き、今回は6回目。県内の企業などに裁判員候補役の名簿をもらい、選任手続きから取り組み本番さながらに行った。

 裁判員制度では、裁判員と裁判官が、検察側、弁護側双方の証拠や主張を吟味したうえで議論を交わし、有罪や無罪、刑罰の重さを決めるため、法律に詳しくない裁判員でも理解できる「分かりやすさ」が重要なポイントとなる。

 裁判員と裁判官が話し合う「評議」でも、司会の裁判官がホワイトボードに双方の論点を書き出して、議論をまとめていく。判決文も、評議後、約30分で論点を簡潔にまとめるなど、これまでの模擬裁判で培った作業を検証した。

      ◎

 従来の刑事裁判は、主に書面で大量に提出された証拠を裁判官が吟味した。それが、裁判員制度では公判前整理手続きを経て、証拠を絞る必要がある。1年以上かかることもあった公判も、裁判員の負担を考え、3日程度に大幅に短縮される見込みだ。裁判員役で参加した高岡市の会社員北山和幸さん(30)は「裁判所に来るのも初めてだったが、議論するうち、不安が解消した。裁判官が良いアドバイスをしてくれれば、素人でも大丈夫では」と感想を語った。

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 ただ、地裁の要請で傍聴していた視聴覚障害者団体の代表者は課題を指摘した。

 県聴覚障害者協会の小中栄一事務局長(54)は「会話のやりとりが速すぎて、手話通訳が追いつかなかった。裁判官や裁判員にもゆっくり話すよう理解してもらう必要がある」と提案。県視覚障害者協会の塘添(とうぞえ)誠次理事(59)は「犯行現場の地図や写真を見せられても分からない。視覚が不自由な人が裁判員になった場合の工夫が必要だ」と話した。

 地裁総務課は「思わぬ課題が出てくる可能性がある。誰が裁判員になっても分かりやすく裁判が進められるようにしたい」と話し、地裁職員が協会に出向き、意見を聞く予定だ。

 模擬裁判で裁判長を務めた岩井隆義・総括判事は、「厳選した必要な証拠で分かりやすい判決を行い、司法に対する理解を深めて頂きたい」と強調した。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/toyama/feature/toyama1227279936308_02/news/20081122-OYT8T00029.htm