「大変、血だらけで倒れている」「まさか連続で…」。さいたま市南区で元厚生事務次官夫妻が殺害された衝撃が冷めやらぬ18日夕刻、今度は東京都中野区で、別の元次官宅で妻が血だらけで発見された。連続テロか、目的は…。前代未聞の事態に厚生労働省内には戦慄が走り、閑静な住宅街に不安が広がった。
中野区で襲撃された元次官吉原健二さん(76)の妻靖子さん(72)は「宅配便です」との声で玄関に出たところを刺されたといい、血が点々と続く隣人宅前の路上であおむけに倒れていた。
近所の無職男性(70)が「大丈夫か」と声を掛けるとわずかに反応し、無言でうなずいた靖子さん。健二さんにも危害が及ぶと考えたのか、病院に搬送される際「主人が狙われているかもしれない。危ない」と不安を口にしたという。
現場近くは警察の規制線が張られ、パトカーが集結。報道陣が詰め掛け騒然とする中、通り掛かった会社員男性(46)は「年金問題の恨みが関連しているなら悲しい事件だ」と話した。
「異常なことが起きている」。わずか半日の間に元次官宅襲撃の一報が相次いで飛び込んだ厚労省。職員らが慌ただしく走り回り、事実確認を急ぐ一方で、歴代事務次官や年金局幹部経験者に身辺注意を呼び掛けた。「連続事件の可能性もあるのか」と職員は未曾有の事態に困惑した様子。
元次官2人を知るOBは「2人は国民の誰もが受け取れる基礎年金制度を導入した立役者。恨まれる筋合いはないはずだ」と憤った。
一方、元次官山口剛彦さん(66)と妻美知子さん(61)が殺害されたさいたま市南区の現場。凶行があったとみられる自宅玄関のドアのすき間からは真っ赤な血が流れているのが見えた。
埼玉県警の鑑識活動が続く中、付近の小学校では万が一の場合に備え集団下校の措置も。2人の娘を迎えにきた母親は「何が目的なのでしょうか。怖い」とおびえた声で話した。