午前9時半、盛岡地裁3階の中会議室。地裁書記官の説明が始まると、裁判員候補の23人は緊張した面持ちで聞き入った。
「それでは、起訴事実の説明をします」。模擬裁判で扱う事件の概要が紹介された。2台の大型ディスプレーに、「罪名 危険運転致死」と表示されると、事件の説明はわずか2分ほどで終わった。
続いて、別室で候補者の個別面接。その間、会議室では裁判員に支払われる日当などについて説明が行われた。候補者はプライバシーに配慮し、首からさげた番号で呼ばれる。
「自分は当たらないだろうな」。35番の盛岡市の女性会社員(45)はそう思っていた。裁判員に選ばれなければ、午前中で終わる。午後からは出社する予定でいた。
裁判員候補者は初公判の日の午前に地裁に呼び出され、6人の裁判員が決まるまで、会議室で待機する。待ち時間のために、室内には雑誌やコーヒー、お茶も用意されている。
午前11時過ぎ、コンピューターで抽選が行われ、大型ディスプレーに6人分の番号が表示された。選ばれた6人は、別室に呼ばれ、裁判官の前で誠実に裁判員を務めることを約束する宣誓文を朗読し、署名押印した。
これで裁判員の選任手続きは終了。法廷に臨む。
「当たっちゃった。仕事はどうしよう」。35番の女性は急いで携帯電話を取り出し、会社に連絡を入れた。
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地裁3階の301号法廷。昼食をはさんだ午後1時半、初公判が始まった。
佐々木直人裁判長、小野寺真也裁判官に続いて、裁判員6人が入廷。検察官が起訴状の朗読を終え、罪状に対する裁判長の質問に、被告人が「間違いありません」と答えると、検察官は法廷内の大型ディスプレーを使い、冒頭陳述を始めた。
裁判員もメモを取りながら、耳を傾けた。
弁護側の冒頭陳述。さらに検察、弁護双方の証拠調べ、証人尋問へと続く。
「初日はじっと聞いているだけなので、長く感じた」。一関市上坊、不動産鑑定士熊谷弘幸さん(46)はすっかりくたびれた様子。矢巾町から来た行政書士細川栄子さんは「いろんな話が次々と出てきて、どこが大事な点なのか理解しきれなかった」と困惑気味だった。
初日の審理が終了し、6人が地裁を出たのは午後5時過ぎ。外はすっかり日が暮れていた。2日目の審理は、翌日の午前10時から始まる。
■裁判員に支払われる日当など
裁判員候補として盛岡地裁に呼び出された人には、交通費のほか1日8000円以内が日当として支払われる。裁判員に選ばれると日当は1日1万円以内。自宅が地裁から遠く、ホテルなどに宿泊しなければならない場合は、宿泊料も支払われる。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/feature/morioka1227018339258_02/news/20081119-OYT8T00684.htm