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2008年11月19日(水) 22時30分

元次官宅襲撃で官邸に情報連絡室、事件拡大防止へ厳戒態勢読売新聞

元厚生事務次官宅への襲撃事件を受け、夜間も警察官による警備が続く厚生労働省(19日午後9時15分)=吉岡毅撮影

 旧厚生省の事務次官経験者に対する連続テロとみられる事件を受け、政府は事件の拡大を防ぐため厳戒態勢を敷いている。

 厚生労働省を中心に警戒を強める一方、情報収集に全力をあげている。

 麻生首相は19日夜、首相官邸で記者団に、「今の段階では、単なる傷害か何か決まっていない。その段階ではうかつなことは言えない。これが、テロだと二つの(事件の)間に明らかな意図があったということがはっきりしたなら、断固たる処置をとるのは当然だ」と述べた。

 首相官邸への連続事件の一報は、18日午後8時20分に、警察庁から同庁出身の漆間巌官房副長官にもたらされ、直ちに首相と河村官房長官に伝えられた。その際、首相は捜査の徹底と警備の強化を漆間副長官に指示。同9時には首相官邸の危機管理センターに情報連絡室が設置された。

 一連の対応は、政府が災害やテロなどの緊急事態に備えて用意したマニュアルに沿って進められた。今回の事件はまだ「連続テロ」と断定できないことから、マニュアルで定めた「緊急事態」には該当しないものの、「緊急事態に発展する恐れがあり、大きく構える必要がある」(政府関係者)として同連絡室の設置を決めた。今後、犯行声明など明らかにテロと判断できる状況になれば、「官邸連絡室」、さらに「官邸対策室」へと格上げして、人員を増やすなど態勢を強化する構えだ。

 厚生労働省は事件を受け、警察庁に、歴代の次官経験者らの自宅や庁舎の警備態勢の強化を要請した。庁舎玄関には警備員を増強し、来庁者には金属探知機によるボディーチェックや荷物検査も実施している。

 ただ、事件の全容が不明な段階で、どのようなメッセージを出せばいいのか、政府は対応に苦慮している。首相周辺からは、「首相は、テロは許さないという強いメッセージを出した方がいい」と指摘する声が出る一方、「犯人を挑発する恐れもあり、言い方は難しい」と慎重な意見もある。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081118-5344510/news/20081119-OYT1T00746.htm