旧厚生省の事務次官経験者に対する連続テロとみられる事件で、18日朝に殺害されているのが見つかった元同次官山口剛彦さん(66)夫妻のさいたま市内の自宅で、近所の住民が17日午後6時頃、男性が言い争うような声を聞いていたことがわかった。
山口さん宅の食卓には調理された食事が並べられたままになっていたことも判明。夫妻が襲われたのは夕食の時間帯の可能性が高まった。
埼玉県警と警視庁は、同じく次官経験者だった吉原健二さん(76)の妻が18日に男に刃物で刺されたのとほぼ同じ時間帯だった点を重視し、二つの現場での目撃情報の収集を急いでいる。
山口さんが妻の美知子さん(61)とともに殺害された同市南区の自宅隣のアパートの男性会社員(30)によると、17日午後6時頃、「ワー」「オー」という男性の叫び声が聞こえ、叫び声は15秒ほど続いたという。同県警によると、山口さんの両腕には、犯人と争った際にできたとみられる刃物の傷が複数見つかった。血痕が付いた犯人とみられる足跡は1種類で計19個。玄関を出て右に曲がり、約50メートルにわたって続いていた。模様のようなものがあり、運動靴とみられる。室内からは、夫妻のものとみられる携帯電話2個と複数の財布が見つかった。
同県警幹部の話では、山口さん宅の1階台所の調理器具には調理中の食材が残されており、テーブルにも食べ物が並べられていた。居間のテレビもついたままで、用意されていた食事は17日の夕食の可能性が高いという。玄関前の外灯はついており、17日の夕刊は家の中にあったが、18日の朝刊は新聞受けに残されていた。同県警は、夕食前の夫妻が突然の来訪者に襲われたとの見方を強めている。
◆中野の犯人、青い作業服で宅配装う…血痕60m、南へ逃走か◆
一方、吉原さんの中野区上鷺宮の自宅玄関先から南方向の路上に、約60メートルにわたって血痕が残っていたことが警視庁の調べでわかった。吉原さんの妻靖子さん(72)を刃物で刺して重傷を負わせた犯人は、青色の作業服で宅配便業者を装っていたことも新たに判明した。
捜査関係者によると、血痕は、吉原さん宅前の路上から始まり、東に約10メートルの場所にある交差点を右折し、南方向に約50メートルにわたって約2メートルの等間隔で続いていた。靴の裏の跡のような痕跡もあり、犯人が逃走した際に付着したとみられる。血痕の間隔から血のりが片方の靴だけに付着した可能性もあり、同庁は、山口さん宅の周辺で見つかった足跡と同一かどうか埼玉県警に照会するとともに、犯人の逃走経路の割り出しを急いでいる。
靖子さんは18日午後6時30分ごろ、「宅急便です」との声で玄関先に出て襲われ、病院に搬送された際、「犯人は宅配便業者のような格好をしていた。青っぽい上着を着ていた」と話したという。靖子さんは胸に数か所の刺し傷があったほか、背中と右ひざも負傷し、両腕には犯人と争った際にできた傷が多数あった。左胸の傷は肺まで達しており、同庁は、犯人に強い殺意がなければ、これだけの傷はできないとみている。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081118-5344510/news/20081119-OYT1T00429.htm