元厚生事務次官らが相次いで殺傷された事件から一夜明けた十九日朝、東京・霞が関の厚生労働省では、入り口で警備員が職員以外の入庁者を金属探知機でチェックする厳戒態勢が取られた。
四十代の職員は「陳情も多いのでセキュリティーは緩い方だった。排他的になるので厳しくするのは良くないが、仕方がない」。肉親捜しのため一時帰国中の中国残留孤児ら約十人もチェックを受けた。
現職幹部の身辺警護もものものしい雰囲気に。
衆院厚生労働委員会でも、与野党議員が険しい表情で質疑に臨んだ。「卑劣な犯罪。一刻も早く解決してほしい」と語気を強めたのは民主党の「ミスター年金」として年金記録不備問題を追及してきた長妻昭氏。自民党の西川京子氏は「政治家へのテロはあったが行政官を狙った犯行は初めてではないか」と憤った。
一方、さいたま市南区の現場には朝、知り合いとみられる男女五人が訪れ、警官に白いユリの花束を託して立ち去った。集団登校する小学三年生の男児(8)を見送った主婦(33)は「子どもたちをしっかり見守ってあげないと」と話した。
東京都中野区の現場では茂みや排水溝を捜索、犯人の遺留品の発見に全力を挙げた。近所の無職男性は「ここを走って逃げていったのか。人通りは少なくないのだが…」。別の女性(29)は「犯人に狙いがあったのなら近所の不安はなくなるのかもしれないが、社会全体が恐ろしくなった」と顔をこわばらせた。