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2008年11月19日(水) 00時18分

元厚生次官宅連続襲撃、厚生行政に恨み? 接点は「三重」と「年金」産経新聞

 歴代の旧厚生事務次官宅で18日、本人や家族が相次いで刺された。さいたま市では山口剛彦さん(66)夫妻が死亡。東京都中野区で重傷を負ったのも先輩に当たる吉原健二さん(76)の妻、靖子さん(72)だった。両氏は現在の基礎年金をつくった幹部。「2人が狙われたのはテロなのか」。厚生労働省には緊張感が張りつめた。

 ■「三重」と「年金」

 「主人が狙われているかもしれない。危ない」

 政府高官によると襲われた吉原さんの妻、靖子さんは搬送される際、そう話したという。

 吉原さんは昭和7年、山口さんは16年生まれという年の差はあるが、2人はともに東大法学部を卒業。厚生行政を担うエリート官僚として、社会人としての人生を歩み始めた。かつ2人はともに、キャリアを積むために三重県に出向経験がある。厚労省幹部は「昔は同郷出向者の職員同士でグループを作り、異動のたびに歓送迎会を開くなど、年次を超え、交流は深かった」と語る。

 吉原さんは30年に入省し、児童局企画課から勤務をスタートさせた。34年5月〜35年4月まで年金局に勤務。その後、39年9月に三重県へ出向。吉原さんも48年4月に三重県へ出向の経験がある。

 三重県に次ぐ共通点が「年金」だ。年金部局は厚生省のエリートが経験するポジション。吉原さんが59年6月に年金局長となった際、山口さんは同局課長。上司と部下の関係だった。

 60年4月の国会参院社会労働委員会では、吉原さんと山口さんがともに政府委員として同席。当時、委員会では基礎年金と生活保護との関係が議題となり、吉原さんが年金改正案と生活保護との関係について答弁。基礎年金と生活保護の支給費について説明していた。「2人は当時、国民の誰もが受け取れる基礎年金制度を導入した立役者」と関係者は話す。

 ■衝撃

 「2つの事件が関連しているかどうか分からないが、卑劣な行為」。元厚生事務次官夫妻らが相次いで殺傷された事件に、舛添要一厚生労働相は18日夜、東京都内の自宅前で記者団にそう語った。

 旧厚生省幹部を狙った連続テロの可能性を問われると、「中身が分からないので情報収集に全力を挙げるよう事務方に指示した。偶然かもしれないので」と具体的な言及は避けた。

 厚労省では吉原さんの妻への襲撃のニュースが伝わった18日午後8時時過ぎから、在庁していた幹部職員らが庁内を駆け回る光景が見られた。勤務20年の男性職員は、「こんなことがあるなんて。言葉が出ない。職員に関係する殺人事件の経験は個人的には初めて。許せない」と動揺の口ぶりで話した。

 厚労省では、審議官以上の現役幹部らに対し、身辺に注意するよう電話連絡を始めるとともに、霞が関の本庁舎入り口や大臣官房があるフロアなどの警備員の増員を開始した。

 ■風当たり?

 ある職員が「恨まれるとしたら、心当たりが多すぎる」というほど、最近の厚労省への世間の風あたりには激しいものがある。直近1年だけでも、吉原さんと山口さんの経歴が重なる年金問題の不祥事にとどまらず、薬害C型肝炎、医師不足、後期高齢者医療、派遣労働者問題…。所管するあらゆる分野が、国民の大批判を浴び続けている。

 問題が噴出するたびに舛添厚労相が直属のプロジェクトチームを立ち上げて、対応策を検討するが、批判は収まらない。

 11月12日には、「厚労行政のあり方を考える懇談会」の座長を務める、トヨタ自動車の奥田碩相談役は「(マスコミは)朝から晩まで厚労省を批判している。国民だって洗脳されてしまう」と発言。メディアへのスポンサーを降りることを臭わす発言し、話題となった。「そういったことと事件は関係あるのか」。帰宅していた幹部職員の1人は、連続襲撃の知らせに不安げにそう話した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081119-00000506-san-soci