「まさか、連続で…」。事務次官経験者2人が相次いで事件に巻き込まれた厚生労働省。吉原健二さん(76)の妻が東京都中野区の自宅で刺されたとの一報に衝撃が走った。職員はニュースを食い入るように見つめ、ある幹部は「組織的なテロだと思う」とうめいた。
省内では職員たちが、慌ただしく走り回って事実確認を急いだ。40代の幹部は「誰か裏で糸を引いている人間がいるんじゃないのか。年金局絡みの何らかの警告ではないか」と青ざめ、「ただ、これでひるんではいけない」と気を取り直したように話した。
別の幹部は「連続事件の可能性もあるのか」と絶句。「異常なことが起きているが、背景など何がどうなっているか、全く分からない」と、驚きを隠せない様子だった。
厚労省は、歴代事務次官や年金局幹部経験者に身辺に注意するよう連絡を開始。残業で残っていた職員にも「身辺に細心の注意を」「宅配便を装ったとの情報もあるので、宅配便への対応にはくれぐれも注意を」と記されたメモを配った。
「何が関係しているのか分からないので、落ち着いて気を付けるしかない」と、自らに言い聞かせるように話す幹部も。
同省の元幹部は、さいたま市で殺害された元厚生事務次官の山口剛彦さん(66)と吉原さんについて「国民の誰もが受け取れる基礎年金制度を導入した立役者」と評価。「偉大な功績であり、恨まれる筋合いはないはずだ。狙われる理由が分からない」と憤った。
「吉原さんは大先輩で、非常に責任感の強い、しっかりした方という印象。山口さんは前任次官が逮捕された事件で厚生省が危機に陥ったときにリーダーシップを発揮した。2人とも素晴らしい人だ」と話した。