発展途上国で深刻な森林破壊を防ぐ資金を調達するため、二酸化炭素(CO2)の国際的な排出量取引市場を活用する新たな事業が、本格的に始動することになった。
世界銀行が運営する基金の資金で焼き畑など森林破壊の防止事業に取り組み、それによって排出せずに済んだCO2を国際市場で「排出枠」として売り、得た資金でさらに森林保全を進める仕組み。日本は基金に一千万ドル(約九億七千万円)を出資、ベトナムやマダガスカルなど二十五カ国で近く事業が始まる。関係者が十六日明らかにした。
森林破壊防止によるCO2の排出抑制効果は、京都議定書の中では評価されておらず、関係者は仕組みが実現すれば温暖化対策と自然保護が両立できると期待している。
この仕組みは「森林の破壊と劣化防止」の英語の頭文字を取って「REDD」と呼ばれる。日米などが出資して昨年、モデル事業実施のための「森林炭素パートナーシップ基金(FCPF)」を創設した。基金からの資金で、違法伐採の監視や保護区の設定など森林保全対策を実施。その結果、排出を抑制できたCO2の量を算出するための手法を確立し、信頼性の高い制度づくりにつなげる。生み出された排出枠を買い上げることも検討する。
FCPFは十月末に米国で開いた初の運営会議で二十五の対象国を正式に決定。対象国と出資国それぞれ十カ国の代表で構成する運営委員会や、専門家の委員会を設立して、対象事業の内容などを検討することになった。今後、対象国をさらに五カ国増やすことや、森林に暮らす先住民を対象とした百万ドル規模の事業を進めることも決めた。
基金の総額は現在、一億七千万ドルで、世銀などは最終的に三億ドル規模を目指している。