2008年11月16日(日) 18時37分
金融サミット総括 外交成果も政権浮揚は「?」 景気に解散権握られ金縛り(産経新聞)
【ワシントン=高木桂一】歴史的な緊急首脳会合(金融サミット)で麻生太郎首相は、一定の存在感を示した。深い傷を負った米欧諸国に比べれば、日本の実体経済への影響は小さいアドバンテージも首相の立場を引き立てた。しかし金融ショックをめぐる国際協調が国内経済を上昇気流に乗る保証はない。「経済の麻生」は皮肉にも、伝家の宝刀の衆院解散権を視界不良の「景気」に事実上握られた。
首相は15日夕(日本時間16日朝)、市内で行われたサミット閉幕直後の内外記者会見でこう胸を張った。
「危機はチャンスでもある。(世界の)日本に対する期待の大きさ、日本の果たさなければならない役割の大きさを感じた。日本はサミットを主導することができた」
首相は国際通貨基金(IMF)への1000億ドル融資や発展途上国支援の30億ドル規模の新基金創設などを矢継ぎ早に打ち出した。ドル基軸体制堅持などを盛り込んだ「麻生提案」はブラウン英首相らに賞賛された。14日のワーキング・ディナーでは主催者のブッシュ米大統領から最初の発言者に指名され、15日の本会合でも同大統領の隣席に陣取った。また、同日付ワシントン・ポスト紙にインタビュー記事が掲載されるなど米有力メディアからも注目を集めた。
それはなぜか。「失われた10年」を経験した第2の経済大国への国際社会の期待であると、麻生首相は記者会見で強調した。
ただ、首相が意欲をみせていた金融サミットの第2回会合の日本開催も固めることはできなかった。
国際金融が安定化を軌道に乗せるまでの課題も多い。総論で一致をみせても各論では先進国と新興国の間に温度差があり、先進国内でも米国と欧州の一部とは同床異夢だからだ。
国民が外交の果実を肌で感じられなければ、首相は自身をとりまく厳しい国内事情をカバーできない。
同行筋によると、首相がこれまで解散を想定したタイミングは2度あった。就任直後の臨時国会冒頭の10月上旬と、11月初旬だった。だが10月下旬に北京で開かれたASEM(アジア欧州会合)に出席し、経済低迷にあえぐ各国首脳の悲鳴を耳にし「選挙をやっている状況にない」と解散を封印する決断を下した。
首相は14日、解散・総選挙を平成20年度予算成立後の4月以降に先送りする考えを示唆した。「景気対策優先」が大義だが、実際には選挙のバロメーターとなる内閣支持率と株価が思うようには上がらず、解散はできない「自己都合」の側面が強いといえる。
迷走をたどる総額2兆円の定額給付金を目玉とする追加経済対策への世論の支持は高くない。首相の求心力に陰りがみえ、「選挙管理内閣」からいつしか変貌した、景気頼みの「経済管理内閣」はミシミシときしみだしている。
首相は22、23日のペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や、来月中旬に福岡市内での開催が調整中の韓国、中国との3カ国首脳会談など年末に向け外交を積極展開し、政権浮揚への足掛かりを模索する。
だが、7月の北海道洞爺湖サミットで福田康夫前首相は温暖化対策をめぐる論議を主導しながら、2カ月足らずで退陣表明となった経緯もある。
自民党内では来年1月の通常国会冒頭での解散を逃せば、「ねじれ国会」のもとで野党に解散に追い込まれ、下野は不可避との空気が漂い始めている。先が見えない景気に政局を委ねる首相への不満もくすぶっている。
ある自民党有力議員はこう不気味にささやく。
「麻生さんがもたもたしていると、総選挙の前に総裁選がある」
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