自民、公明両党は12日、追加経済対策の柱である「定額給付金」の概要を決めた。基本給付額は1人当たり1万2000円で、所得制限を設けるかどうかは市区町村の判断に委ねる方針に。麻生太郎首相(68)は「現場は混乱しない」と強弁したが、政府に“丸投げ”された形の各自治体に限らず、身内の与党内からも反発の声が噴出した。「選挙対策」とやゆされ、方針が二転三転した末の決定だが、国民の懐に入るまでにはもうひと波乱ありそうだ。
迷走した揚げ句、結論は“丸投げ”だった。与党合意によると、給付額を1人当たり1万2000円とし、18歳以下と65歳以上には8000円を加算。高額所得者を除外するための所得制限は、制限を設ける場合は年間所得1800万円を下限とした。懸案事項の所得制限に関する判断は、市町村が判断することで決着した。
所得制限の有無を各市町村に委ねたことで混乱が予想されるが、麻生首相は「それはあなた(報道陣)の希望であって、現場は混乱しないと思うよ。各市町村が自分で決める公平性には問題ない」と言い放った。
麻生首相が10月30日の記者会見で追加経済対策の柱としてぶち上げた総額2兆円の「定額給付金」。当初、全世帯支給の方針を表明したが、野党から「選挙対策」「消費税増税を見越した上でのばらまき」と批判され、迷走が始まった。所得制限すれば、衆院選をにらんだスピード支給が頓挫する。しなければ「ばらまき」と批判される。難題に直面した政府与党内に急浮上したのが、市町村への“丸投げ”案だった。
公明党の太田昭宏代表は「市町村への丸投げには当たらない。1800万円という下限を示している」と援護射撃したが、市町村側は給付金支給の膨大な事務作業に負われることに。各自治体の判断によっては給付条件が異なってしまい、批判を浴びる恐れもある。
身内からも疑問の声が上がっている。自民党総裁選で麻生首相の選対本部長を務めた鳩山邦夫総務相は「釈然としない。もっと詰めてほしい」と不快感。定額給付金に冷ややかで、いち早く所得制限の導入を提唱した与謝野馨経済財政相は「市町村がやりたいようにやらせてあげればいいんだ」と河村建夫官房長官にこぼすなど「閣内不一致」状態になっている。
与党は年度内実施を目指すが「(市町村で)混乱はある。年度内支給は難しいだろう」(自民幹部)と厳しい意見が出ている。二転三転した末の結論だが、火種が地方に飛んだだけという見方もできる。
地方からは早くも批判や悲鳴が続出。それでも首相は「地域にとって全然(事情が)違う。地方分権だからいい」とまで指摘。自身の給付金受け取りについては「僕はもともと受け取る気ありませんから」と答えた。
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