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2008年11月13日(木) 19時18分

SAP「アップグレードしません宣言」のその後@IT

 ERPシステムではしばしばアップグレードが大きな問題となる。安定して動いているERPをアップグレードするのはIT部門にとって大仕事だ。WindowsのようなクライアントOSでもアップグレードによって互換性の問題が出て、特定のデバイスやアプリケーションが動作しないことがある。複数のモジュールで、ビジネスプロセスが複雑に絡まり合い、アーキテクチャの異なるシステムと接続されるERPでは、新規導入以上の作業になるケースもある。ERP最大手の独SAP幹部ですら「ペインフルだ」というほどだ。

 このようなアップグレードを避けるためにSAPは2006年にSAP ERPを「アップグレードしません」と宣言した。大規模なアップグレードはせずに、顧客が必要な機能だけを選んで追加できる「エンハンスメントパッケージ」を提供する方向に転じた。範囲を限定した機能追加のため、大規模なテストや改修は不要といい、独SAPのバイスプレジデント スベン・デネケン(Sven Denecken)氏は「イノベーションのメリットをより早く、簡単に得られる」とメリットを強調する。

 エンハンスメントパッケージは最新版のSAP ERP 6.0に対してこれまで3本が提供されていて、2008年中に4本目を提供予定。デネケン氏によるとSAP ERP 6.0は世界で8600社が導入。エンハンスメントパッケージは1000ライセンスが提供されているという。エンハンスメントパッケージは今後も「9〜12カ月ごとに提供していく」とデネケン氏は語った。2009年からはCRM、SCMに対してもエンハンストパッケージを提供するという。

 痛みを覚悟してERP導入企業がこれまでアップグレードしてきたのは、現行バージョンの保守サポート期間が切れてしまうことが理由の1つだ。SAPはこの保守サポート期間をSAP ERP 6.0と、ERP、CRMなどのスイート製品「SAP Business Suite」に関して、従来の5年から7年(標準保守期間)に延ばすことを11月13日に発表した。延長保守オプションを利用すれば、さらに2年間使うことができる。デネケン氏は「いまはSAP ERP 7.0の計画はない」と話し、アップグレード中心の考えから、顧客が導入を選択できるエンハンストパッケージへのSAPの移行を強調した。

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