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2008年11月12日(水) 17時15分

【元Vシネ女優2回公判ライブ】(13)けんかの原因「たいていセックス」…死に至る傷「私たちには普通」産経新聞

 《引き続き、裁判官からの疑問が木村衣里(えり)被告に飛ぶ。被告人質問は午前から通算で2時間近くに及び、何度も同じような質問が繰り返されるが、衣里被告は声を荒らげることなく、淡々と対処していく》

 女性裁判官「(被害者の藤家英樹さんが衣里被告に)暴力をふるった後に(自責の念にかられて自らの身体を傷つける)自虐行為をせずに帰ってしまうことはあったのですか?」

 衣里被告「暴力だけで帰ることもありました」

 女性裁判官「なぜ、帰るのだと思いますか?」

  ■写真&法廷ライブ■ 元Vシネ女優の傷害致死事件〜公判の全記録

 衣里被告「私の中で『怒って帰ってしまったのかなぁ』と思いました。出て行った後に1回も確認したことはないので分かりませんが…」

 女性裁判官「(事件直前に)藤家さんがコンビニに買い物に行く際、左手に洗濯物を持っている姿が防犯カメラに写っていました。なぜ(洗濯物を)持っていたと思いますか?」

 衣里被告「家(藤家さんのアパート)に帰ろうとしたというのが自然だと思いますが…」

 女性裁判官「未明の時間帯ですが、そんな時間に帰る理由はあったんですか?」

 衣里被告「彼のお子さんが遊びに来るといっており、(藤家さんは)私の家に泊まった後で(自分のアパートに)向かうというようなことも言っていました」

 《ここで質問者が女性裁判官から秋葉康弘裁判長に交代する。裁判長は、ふたりの間の“暴行”がSM行為によるものだったのか、それとも衣里被告がいう藤家さんからの一方的な暴力だったのかを判断しようとしているとみられるが、裁判長と衣里被告の受け答えはかみ合わない》

 裁判長「藤家さんが死ぬことを怖がっているような様子はなかったのですか?」

 衣里被告「たぶん怖がっていたと思います。暴力をふるうときに自暴自棄になって『おれは汚いアパートで孤独死するのか』とか言っていました。それが本音だったと今となっては思います」

 裁判長「ほぼ毎日セックスしていたのですか?」

 衣里被告「19年6月以降は勃ちにくくなり、20年に入ると、きちんとセックスするのは難しくなりました。20年に入ってからはちゃんとした普通のセックスは1度もなかった。暴力のときに、特殊というか…」

 裁判長「そうじゃなくて、頻度は1月に入ってからどれくらいですか?」

 衣里被告「1、2回だったと思う」

 裁判長「そうすると、通常はそれくらいの頻度だということですか?」

 衣里被告「1カ月間、何もしないときもあります」

 裁判長「そういうとき(セックスのとき)に毎回、暴力を受けるんですか?」

 衣里被告「どういうことですか?」

 裁判長「セックスするときに暴力をふるわれないときもあるのですか?」

 衣里被告「ぼぼないに等しいです」

 《ここで話は衣里被告がいう自虐行為に移る。衣里被告は、裁判官との話がかみ合わないことにいらだつ様子も見せない》

 裁判長「藤家さんは、暴力をふるった後に自虐行為に及ばないこともあったといいますが、頻度は?」

 衣里被告「怒って帰る以外、家にいるときはほぼあって…」

 裁判長「だから2回に1回とか、3回に1回とか、割合で言えますか?」

 衣里被告「どういうパターンで出ていくのか、行かないのか、分からないので(自虐行為の)割合も分かりません」

 裁判長「今、パターンという言葉を使いましたが、2人の間で、セックスが始まって自虐行為に及ぶというようなパターンがあったのですか?」

 衣里被告「彼のきまぐれというか、彼次第と思っていた」

 裁判長「はっきりしないのですが、暴力が先、セックスが後と、決まっているのではないですか」

 衣里被告「それも彼の気分次第なのですが、今思えば、暴力、自虐行為、セックスの流れになっているんだと思う。当時は彼の気分次第と思っていた」

 《藤家さんが衣里被告に暴力をふるった後に何もせずに帰ることを衣里被告が「怒った」と表現したことについて、裁判官の追及が続く》

 裁判長「どうして怒ってしまうんでしょうか?」

 衣里被告「(私を)殴ってテンションがあがってしまったが、私が倒れてしまっているので、クールダウンできずに帰ったのだと思います」

 裁判長「怒る理由はあるのですか?」

 衣里被告「彼とは、たいていセックスのことでけんかしました。私がセックスを拒むと、彼は『ほかに男がいるのか。そいつとセックスしているから、オレは用なしか』と怒りました」

 裁判長「自虐行為では(藤家さんが)自分でナイフを体に突きつけることもあったといいますが、具体的にどこに突きつけていましたか?」

 衣里被告「腕とか、腹とか、体中ですね。私と向かい合っているので、体の正面です」

 《裁判官の追及は、事件当日の衣里被告の記憶に移る》

 裁判長「(事件のあった)1月26日ですが、あなたはセックスを求めていた藤家さんに『後にして』といって寝ましたが、その『後にして』とはどういう意味ですか?」

 衣里被告「起きてから(セックスする)という意味です」

 裁判長「寝て記憶が戻った際に、明かりはついていましたか?」

 衣里被告「たぶん」

 裁判長「もうろうとしていたというのは、どういう状態ですか?」

 衣里被告「徐々に起こされた感じです。おぼろげに景色がクリアになって、彼とセックスしていると時間をかけて理解しました」

 裁判長「下半身裸の状態で、(ベッドから移って)床に寝ていたわけですよね。その間に、普通なら目が覚めてもおかしくないですよね。こういう(記憶がない)ことはよくあるのですか?」

 衣里被告「朝起きたら、アザがあったり、ノーパンストッキングやランジェリーに着替えさせられていたり、明らかに(知らないうちに)セックスしたんだということはありました」

 《なかなかかみ合わないやりとりに、衣里被告もジェスチャーを交えながら答えるようになるなど、ちょっとした変化もみられるようになる》

 裁判長「(藤家さんが死亡した原因となり、衣里被告が接着剤で止血しようとしたという傷口の写真を衣里被告に見せて)これくらい傷口は開いていたのですか?」

 衣里被告「ここまでではなく、3分の1くらいの大きさでした」

 裁判長「赤身が見えたと言ってられましたが…。普通は肉の赤身が見えるほど切れないでしょう」

 衣里被告「これまでにパカッと開いてみえることはありました。私も4センチくらい太ももが切れたこともあった。私たちの中では普通だったかと…」

 《死に至る傷口も「普通」と言い切った衣里被告への裁判官からの質問はなお続く》

    =(14)に続く

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