来日して手続きをしないことを理由に長崎県が被爆者健康手帳の交付申請を却下したのは違法として、韓国・釜山市の女性被爆者
来日要件を撤廃した改正被爆者援護法が年内に施行されるが、改正前の処分の妥当性が争われた。違法性指摘の判決は三度目だが、被爆者本人が生存中に却下処分を取り消したのは初めて。在外被爆者援護の一層の充実を迫る判断となった。
鄭さんの長男
判決理由で須田裁判長は、来日要件の合理性は認めたが「身体的、精神的事情で来日が困難な場合に、被爆事実などを直接本人から事情確認する必要性は乏しく、代わる方法は十分にある」と指摘。寝たきりの鄭さんは要件適用の例外に当たるとし「来日しないことだけを理由とする却下処分は違法だ」と判断した。
さらに「援護法が補償対象を日本国籍者に限定していないのは、被爆による障害には特異性と重大性があり、内外で区別すべきではないとしたものだ」と強調。「国内に居住地がなくても同法による援護を受けるべき地位にある」と述べた。
判決によると、鄭さんは広島市在住時に被爆し、戦後は韓国に戻った。二〇〇六年八月に支援者のいる長崎県に郵送で手帳の取得を申請したが、寝たきり状態で日本に渡航できず、却下された。
同種訴訟では、今年七月に広島地裁、九月に広島高裁がそれぞれ別の訴訟で「違法」との判断を示しており、大阪地裁でも係争中。