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2008年11月07日(金) 01時06分

「拡大教科書」作成まだ3分の1 多くの課題指摘産経新聞

 弱視児童・生徒向けに文字や図表を大きくした「拡大教科書」について、平成21年度に教科書会社が作成を予定している小中学校の拡大教科書は、検定教科書の約3分の1の145点にとどまることが6日、文部科学省の調査で分かった。大半は主要教科の教科書で、音楽や技術家庭などの教科への取り組みは遅れているなど、多くの課題が指摘されている。

 文科省によると、来年度に拡大教科書の作成を表明しているのは、19社ある教科書会社のうち9社。427点ある小中学校用の検定教科書のうち145点について拡大教科書が発行される。今年度の69点からは大幅に増加したものの、十分とはいえない状況となっている。

 145点のうち137点は国語、数学、理科、社会、英語の主要教科で、その他の必修教科では音楽が予定されているにすぎなかった。同省では「今年度と比べて倍増することは評価できるが、主要教科以外は進んでいない上、高校生向けの拡大教科書の作成は取り残されており課題は多い」と話す。

 拡大教科書について、18年度は小中学校の通常学級に在籍する弱視児童・生徒約1700人のうち、634人に約1万1300冊が供給された。しかし、約8割はボランティアの手作りというのが実情。教科書会社の積極的な取り組みが求められており、今年6月には、会社側に拡大教科書を発行する努力義務を課す法律が成立した。

 拡大教科書の普及に向けて協議している文科省の有識者会議は先ごろ、文字の大きさや図表の取り扱いなどの基準を大筋でまとめた。一定の基準を設けることで教科書会社の動きを促す狙いだ。11月には確定版を完成させるという。

 基準では、文字サイズは本来の2倍以上に当たる22ポイント(一辺約8ミリ)、字体はゴシック体を標準としている。レイアウトはできる限り原本通りとし、図や写真は見にくいものは作り直すとしている。ボランティア団体へのデータ提供の方法も盛り込んだ。「この基準で、弱視児童・生徒の約8割はカバーできる」(文科省幹部)としている。

 教科書会社の取り組みが遅れていることについて、有識者会議のメンバーの筑波大付属視覚特別支援学校の宇野和博教諭は10月31日の会議の中で「全体の3分の1しか作成されないのが残念。法律も基準もできたのだから、出版社はもう少し頑張ってほしい」と訴えた。

 《拡大教科書》 検定教科書を拡大・複製し、弱視者でも読みやすくした書籍。見やすい配色にしたり、原本1ページ分を数ページに分けるため、流れを分かりやすくするなどの工夫が必要となる。法律上は一般図書の扱いだが、現在は無償で給与される。普及のため18年度に国会で3回付帯決議されたほか、文科相名で2度、教科書会社に協力要請している。今年6月には、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」が成立し、会社側に拡大教科書を発行する努力義務を課せられている。

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