麻生太郎首相は六日午前、首相官邸で地方分権改革推進委員会の丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)と会談し、国の出先機関である全国七カ所の農林水産省地方農政局と八カ所の国土交通省地方整備局について、廃止を含め見直しを検討するよう指示した。
ただ、廃止する場合は、地方自治体に多くの職員や財源を移譲する必要があり、さらに組織の存続を求めてきた農水省と国交省の抵抗は必至で、調整は難航しそうだ。
麻生首相は会談で「国民の目の届かない出先機関を目の届くようにしてほしい」と要請。廃止を含め検討する理由として「汚染米事件とか道路特定財源の無駄遣いの問題。国民の目から見ると不信感が出先機関にある」などと述べた。
これに対し丹羽委員長は会談後に「原則廃止の方向で検討するが、残さなければならないものは各府省の機関を合体させるとか方策はある」とし、省庁横断的な総合的な出先機関として農政局と整備局を統合する案を検討することも示唆した。
丹羽委員長はさらに、出先機関から自治体への人員の移管や税財源の移譲について専門に検討する委員会を設置する考えを示した。
麻生首相は同日昼、記者団に「消費税(増税)の前に行革は大事だ」と強調。十月三十日に表明した「三年後の消費税率引き上げ」の前提として大胆な行政改革をアピールする狙いもありそうだ。一方、指示内容については「廃止をということではなく、統廃合を指示した。ほかにもいろいろあるけど二つを例に挙げた」と説明した。
分権委は国交省の地方整備局など八府省の十五機関を対象に、地方分権の観点から事務や権限を大幅に見直し、必要性のない組織の廃止や統合を検討。来月上旬にも首相に提出する第二次勧告に向け、出先機関の統廃合を含めた抜本的な見直しを盛り込む方針だ。