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2008年11月06日(木) 00時00分

(4)名義貸しで稼ぐ島読売新聞

 南太平洋に浮かぶ人口1500人足らずの島が昨年、インターネットの世界で一躍有名になった。

 ニュージーランド領トケラウ諸島。「世界一危険なドメインを管理する島」として、米ウイルス対策会社マカフィーがその名を公表したからだ。トケラウを表すドメインは「tk」。2006年には、tkが末尾につくアドレスの10本に1本が詐欺に使うフィッシングサイトや迷惑メールに悪用されたという。

ドメイン200万件 犯罪の温床

「インターネット用の通信衛星は故障中だけど……」と言いながら、通信用アンテナを見せるトケラウ・テレコムの職員

 飛行場のないトケラウへの交通手段は、ニュージーランドから2300キロ離れたサモアから、月2回ほどの不定期船だけ。船に揺られて4日目、上陸したのは、東京ディズニーランドとほぼ同じ広さの島だった。

 ヤシの林に囲まれた小さな集落の平屋が、tkを管理する公営企業「トケラウ・テレコム」本社。中には住民が使えるパソコンが数台あるが、故障中で、責任者のティノ・ビタレ氏は「実は、この島でドメイン管理は何もしていない」と苦笑いする。

 トケラウ自治政府は01年、オランダのネット企業「ドットTK」にドメイン使用権を貸し出し、運営を委ねている。いわばドメインの「名義貸し」だ。ドットTKでは一部を無料化して利用者を拡大、世界の国別ドメインで6番目に多い200万件以上に。同社創設者のヨースト・ジュアビア氏は「登録作業を自動化し、低コストを実現した」と胸を張る。しかし、悪名高いドメインの苦情対応窓口は社員2人だけだ。

 名義貸しは、南洋の島々によくみられる。米国の会社に契約金5000万ドル(50億円)、年400万ドル(4億円)で使用権を貸し、収益でフィジー航空の株などを購入したツバルや、ココス諸島——。「『jp』は、登録を日本国内に限定するなど管理が厳しいが、『国の手を離れたドメイン』は、相手も目的も問わず低価格で大量発行され、登録者の身元さえ分からない」。国際大学の上村圭介准教授(通信政策)は指摘する。

 tkは、日本でも登録代行業者に申し込めば簡単に取得できる。大阪市中心部で代行業を営む男性(28)に会った。

 扱うのは、海外の複数の業者を経て仕入れた約40の国や地域のドメイン。ネット上の手続きだけで、厳密な本人確認は不要だ。その代わり、男性の携帯には日本中の警察から、利用者の連絡先を問い合わせる電話がかかる。詐欺、わいせつ、不正アクセス……。2年間の使用料が1110円と最安値に近く、使い捨てしやすいtkは「照会件数もトップクラス」と話す。

 名義貸しでトケラウは、国内総生産(GDP)の約10%(1500万円)の年間使用料と高速通信回線を手に入れた。ビタレ氏は「何もない私たちの島でも外貨が得られた」と言いながらも、少し悔しそうに付け加えた。「本当は、アダルトサイトなどで島が有名になるのは悲しいけれど」

ドメイン ネット上の住所にあたる情報で、メールアドレスなら@以降を指す。国別ドメインは国際機関「ICANN」が252の国・地域に割り振っている。日本の「jp」は、民間企業の日本レジストリサービスが登録・管理を行っており、今年3月に100万件を超えた。

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