名古屋の繁華街・栄は3日、連休最後の買い物客でにぎわっていた。デパート5階で衣料品を選んでいた愛知県日進市の主婦(43)は、「主人の給料が変わらない以上、何かを工夫しないと。ここ数か月、チラシを見たり、レシートを再確認したりして、不要なものがないかをチェックし、買い物の仕方が慎重になりました」と話した。
秋冬もののコートを見に来た名古屋市守山区の主婦(68)と同県長久手町の主婦(75)は、「景気の先行きが分からないので、買い物は慎重にしないと。麻生首相が表明した定額給付金に期待します」と、何も買わずに婦人服フロアを後にした。
金融危機の波紋は、元気な名古屋の象徴だった百貨店にも、暗い影を落とし始めている。松坂屋名古屋店の2008年8月期中間決算は、売上高が前年比4・8%減の618億円に落ち込んだ。ブランド品や宝飾品など高額商品の落ち込みが顕著となっているという。1日にスタートしたお歳暮商戦では、送料無料になるギフト商品の数を増やすなど、固定客のつなぎ留めに躍起だ。販売促進部の松田良弘さん(43)は、「お客さんの財布のひもが固くなることは覚悟している。量販店などに価格では勝負できない分、商品の魅力とサービスで、前年並みの売り上げを確保したい」と気を引き締めた。
液晶テレビやDVDレコーダーなどの売り上げが好調だった家電販売業界も陰りが出始めた。大手家電量販店「エイデン」(本社・名古屋市港区)では、五輪特需もあって4〜9月は前年並みの売り上げを確保したが、10月は前年比で5%程度落ち込んだ。「冬のボーナス商戦を前に、消費の落ち込みが始まったのは不安」と同社の担当者。
日本自動車販売協会連合会によると、国内の新車販売台数は昨年まで3年連続で前年割れが続く。一昨年1月にオープンした「ネッツトヨタ東名古屋猪子石店」(名古屋市名東区)の中原淳一店長(44)によると、販売店に足を運ぶ客数は減っているうえ、複数の店で見積もって安く購入しようとする客が増えているという。「前年比微増をキープしているが、景気悪化が予想され、厳しい状況は当面続く」と中原店長はみている。
消費者の買い控えは、高級品ばかりではなく、日常品にまで及び始めている。スーパー「ユニー」(愛知県稲沢市)によると、「ガソリンが高くなったときは、『外食に行くのを減らそう』という程度だったが、『不景気』という空気がこれほど高まると、消費者の生活防衛意識も日増しに高まり、衣料品などでも財布のひもが固くなっている」と危機感をにじませた。