裁判員制度について共同通信が全国五十二弁護士会の会長に質問し、三日集計したところ、四十二人(81%)が「推進したい」と答え、三人は厳罰化の恐れや裁判員らの負担が大きいことなどを理由に、「廃止」や「延期」を求めた。別の三人は取り調べ全過程の録音・録画(可視化)が実現していないなどの問題点を指摘し、「推進」としながら課題を挙げた会長も十二人に上った。
日弁連は制度を推進しているが、各弁護士会には不満や不安が根強いことをうかがわせた。
集計によると、裁判員制度を「推進したい」「延期すべきだ」「廃止すべきだ」の中から回答を選ぶよう求め、「廃止」と答えたのは沖縄弁護士会長。個人的見解として「推定無罪への理解が進まず、厳罰化への
「延期」は二人で、青森県弁護士会長は「裁判員裁判は地裁本庁だけで裁判員や被告、関係者らの負担が重すぎる」とし、栃木県弁護士会長は「素人が裁くのは憲法違反」と指摘した。栃木県弁護士会は五月に延期を求める決議をしている。三択に答えず問題点を挙げたのは仙台、兵庫県、島根県の各弁護士会長。島根県弁護士会長は「市民に冷静な判断ができるのか不安もある」とした。
「推進」の会長が指摘した課題としては「短期集中審理で拙速な結論が出る」(滋賀)、「検察側証拠の全面開示が実現していない」(岐阜県)、「死刑判決は裁判員、裁判官の全員一致にすべきだ」(釧路)、「無罪判決を書くと出世できないと考える裁判官が大半で信用できない」(大分県)などがあった。
一方、「推進」の理由は「(捜査段階の供述調書が偏重される)調書裁判や(保釈が認められず長く拘置される)人質司法と言われてきた刑事裁判が改められる」(徳島)、「国民の主権者としての自覚が強まり、参加型民主主義を推進する契機となる」(第二東京)などと説明している。
秋田、新潟県、富山県、愛媛の各弁護士会長は三択に答えず、制度にかかわる具体的な見解も示さなかった。
各会長には、裁判員裁判に必要な国選弁護人についても質問。二十三人(44%)が「確保している」とし、二十五人(48%)は「確保すべく努力している」と答えた。