先月、脳出血を起こした妊婦が、都立墨東病院など8病院に受け入れを拒否され死亡した。この問題への対応をめぐり、舛添要一厚労相(59)と石原慎太郎東京都知事(76)が対立。互いへの激しい非難合戦に発展した。舛添氏は「都の対応が間違っていたのは、証明されつつある。私を批判した知事は赤っ恥をかいた」と強気な姿勢を崩さず。まだまだ、論戦は続きそうだ。一方で麻生太郎首相(68)の消費税率アップ発言には「議論すべきことで、適切な提案」と期待感をにじませている。
—病院施設が充実されていると思われた東京で、妊婦が“たらい回し”されて亡くなった。
「大変にゆゆしきことだ。墨東病院は今年7月から、週末の当直医は1人きり。しかも、研修医という状態だった。考えられない。根本的な問題は医師不足。過去10年以上にわたり、厚労省は『医師は余っている』と言い続け、歴代大臣も何もしてこなかった。私が大臣になって対策を講じてきたが、医師の育成は10年はかかる。その矢先に、こんな問題が起きてしまった」
—石原知事と対立は。
「私はあくまで都の対応を指摘しただけ。都知事を名指ししてないのに、知事が一人で熱くなって、マスコミがバトルに仕立て上げたんだ」
—なるほど。
「そもそも、墨東病院は『総合周産期母子医療センター』という全国に74か所ある施設の1つで、国が補助金を出している。だが、地元の医師会が墨東の体制がひどいから、改善をするよう東京都に申し入れていたのに、都はずっと放置してきた。さらに、今回の問題が報道で明るみになるまで、厚労省に報告していなかった。だから私は『東京都に任せられない』と言ったんだ」
—知事の意見に納得できたのか。
「国と都のどちらの言い分が正しかったか分かってきて、メディアは都批判に回りつつある。今回の妊婦の遺族が、どこで会見したか? それは厚労省だ。都立病院で起きた問題なのに、都庁ではなかった」
—つまりは。
「遺族は都に抗議の意思を示す意味があったと思う。勝負はついたでしょ。知事はあんな発言をして、今、赤っ恥をかかされている。知事は行政のあらゆる分野に目を向けなければならないが、少なくとも医療分野に関しては、私の方が知識は豊富だ。都の役人の受け売りだけでなく、自らの目で事の本質を見ないと。医師不足に関して、国も改革を進めているのだから、都も都立病院の再編など、できることはあるはずだ」
—麻生首相が先月30日に、衆院解散・総選挙を当面見送る方針を示した。
「最大の問題は世界的な経済情勢にある。100年に一度あるかないかの金融恐慌が起きるかもしれないという時に、経済大国の日本が総選挙をやっている場合か、ということになる」
—逆にいつ解散するのがベストなのか。
「それも大変判断が難しい。公明党との協調関係もあるし。世界経済の情勢がこんなに悪いと…今後の状況を見守るしかない」
—麻生首相は3年後の消費税率アップについて言及した。
「私は厚労相になる前から、社会保障の財源をしっかり議論すべきと主張してきた。首相の発言は適切な提案だ。税率が10%を超えて、2ケタになる場合は、ぜいたく品と日常の必需品に分けて複数税率にすべきだ」
—選挙前の増税論はタブー視されてきた。
「日本は低い負担で中程度の福祉を実現してきたが、限界に来つつある。それ相応の福祉水準を求めるならば、見合った負担は必要。税率が1%上がれば2・5兆円の増収になる。こういう事情を率直に訴えて、選挙を戦う時期に来ているのではないか」
【石原知事の厚労省批判】妊婦死亡問題の発覚直後に、舛添氏は「妊婦死亡から2週間以上も厚労省に報告が上がってこないのはどういうことか。都に任せていられない」と都批判を展開した。
舛添発言の翌日に、石原知事は「医者の数を増やすのは国の責任だ。東京に任せてられないんじゃない。国に任せてられないんだ」などと反論。さらに「(舛添氏は)墨東病院を視察して事態を聞いた後で、話がトーンダウンした」「あの人、年金の問題も大見え切るけど、いつも空振り。けしからん役人を代弁しているみたいな印象にしか映らない」と批判した。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20081103-OHT1T00056.htm