麻生太郎首相が衆院解散・総選挙の先送りを表明するまで「解散風」を吹かせ続けた自民党の細田博之幹事長。発言を信じて選挙準備にまい進した若手からは「政局音痴」との批判が出る一方、法案審議を進めるための「役割分担」との評価も。役割分担だったにしても解散先送り後の対応に不満が出ており、求心力を失う可能性もある。
「責任があるとは考えていない。警鐘を鳴らし、準備を怠るなというのが私の役割だ。油断大敵、常在戦場という意味で言ってきた」。細田氏は首相表明の翌十月三十一日の記者会見で、こう開き直った。
細田氏は先月七日の会見で、株価下落を受け「党利党略的な対応で議論すべきではない」と述べるなど当初は解散に慎重だった。ところが、その数日後から「直近の民意が大事だ」と早期解散論に軸足を移した。
細田氏と首相は、携帯電話のメールをやりとりする関係。周辺は「解散風で、民主党が国会審議に協力するようになった。このまま重要法案を処理しようと考えたのだろう。『早期解散』を言う役目だったのでは」と解説する。参院幹部は「本当に“悪い人”だ」と苦笑いする。
ただ細田氏の開き直りには「選挙準備はだましてさせるものではない。自身の政局音痴ぶりをごまかしているだけ」(衆院当選一回議員)と怒りの声が出ている。
選挙事務所費などの手当ても深刻な問題となりつつある。「当然、幹事長が面倒を見るのだろう」と不満も充満しつつある。民主党に対しても、今後この手法が通用しないのは確実で、影響は小さくなさそうだ。