2008年11月03日(月) 21時58分
受け取り自粛要請案も 定額給付金の所得制限で迷走 (産経新聞)
総額2兆円を全世帯に給付する生活支援定額給付金をめぐって、政府・与党内に高所得者への給付制限を設けるべきだとの声が強まっている。ただ、事務手続き上、高所得者の捕捉は難しいのが実情だ。このため、政府内には高所得者に受け取りの自粛を要請するという“奇策”まで浮上している。ばらまき批判は困るが、選挙にプラスにならなくては困る与党。その要求に振り回される官僚。政府・与党内の迷走が続いている。
給付の所得制限をめぐっては、与党協議でも問題となったものの、所得確認が難しく膨大な事務作業が必要になることから見送った経緯がある。これを受けて、麻生太郎首相は10月30日の記者会見で給付金を「全所帯について実施する」と説明している。
だが、その後の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)や経済財政諮問会議では、一律給付への批判が噴出。与謝野馨経済財政担当相も「高い所得層の人にお金を渡すのは(生活支援の)名前に反している」と指摘。1000万円前後の所得額を基準に高所得者を支給対象から外すべきだとの考えを示した。
一方、中川昭一財務・金融担当相は「迅速に実施することが大事だ」と強調。事務手続きの煩雑さを考慮し、制限には否定的な見解を示している。このため、政府内では、所得制限を設けて窓口での申請時に制限以下の所得であることを申告し、虚偽の申し込みをした場合、処罰する方法も検討されている。
定額給付の議論では、支給実施を急ぐあまり、財政再建との整合性や経済効果などの議論はおざなりになった。今回の定額給付が景気対策よりも選挙対策であることを図らずも露呈したともいえる。政府・与党が所得制限にこだわるのは高所得者に支給しても政策的な効果が薄いためだというが、言い換えれば、選挙対策上、あまり有効ではないからともいえる。
混迷が深まるなか、政府関係者からは苦肉の策として「高所得者に受け取り自粛を呼びかけるやり方もある」という意見も出ており、支給をめぐる議論はなお曲折がありそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081103-00000554-san-bus_all