パイロットや列車運転士の乗務前検査で、航空と鉄道の大手計二十一社のうち十三社が「精度が低い」と指摘されるハンディータイプの簡易式アルコール検知器を使っていることが一日、分かった。検知器の市場動向に詳しい矢野経済研究所(東京)は「簡易式に内蔵されるセンサーは精度が低く、寿命も短いものが多い。定期交換や買い替えをしないと正確な数値が示されない」と指摘。乗務前の飲酒検査が会社によっては厳格に行われていない可能性が浮き彫りになった。
共同通信が各社にアルコール検知器のタイプを尋ねた。簡易式検知器を使っているのは日航、全日空、JR東日本、JR西日本、小田急、東京メトロ、京王、東武、名鉄、近鉄、阪神、阪急、南海の十三社。
全日空は今年八月、札幌、成田、羽田、大阪、関西、那覇の主要六空港にのみ、社員番号や呼気検査を受ける人物の顔が記録される机上設置型の高性能機種を導入した。
同社によると、簡易式時代には検知で引っ掛かるパイロットはほとんどいなかったが、高性能機導入後は二カ月で基準値(呼気一リットル当たり〇・一ミリグラム)を超えるアルコールを検出したケースが五件続いた。いずれも前日の酒が残っていたとみられるという。
JR東海、東急、西武、京急、京成、相鉄、京阪、西鉄の八社は高性能機を既に完全導入済み。
パイロットは国土交通省の指導で出発前八時間以内の飲酒が、列車運転士は酒気を帯びての乗務が禁止されているが、航空法や鉄道法には明確な呼気アルコール濃度の指標はなく、各社は独自に設けた基準で乗務前検査をしている。
バス運転手には呼気一リットル中〇・一五ミリグラム以上が酒気帯び運転となる改正道交法が適用されるため、大手バス会社はほとんどが高性能検知器を使った厳しい飲酒検査をしている。