2008年11月02日(日) 22時33分
教育委員会はいらない 変わらぬ無責任体制(産経新聞)
「現行の教育委員会は要らない」。市長時代に教委の「不要論」を掲げた人がいる。NPO(特定非営利活動)法人「地方自立政策研究所」の穂坂邦夫理事長だ。
穂坂氏は、平成13年から1期4年間、埼玉県志木市長を務め、在任中に「教委制度の必置規定廃止」特区を国に対して3度にわたって申請した。しかし、いずれも認められなかった。
市長当選時、穂坂氏が目の当たりにした教育行政の仕組みは「よくできた無責任体制」。同じ年に大阪府池田市で起きた児童殺傷事件が、もしここで…と考えたとき、責任を取って辞める人間が、校長以外に見当たらなかったという。
「教育委員会の委員長は『座長』、教育長は『事務長』で、どちらも責任者の立場ではない。市長は教育行政の独立の建前から責任者になれない。素人の合議制の教育委員会が、責任を負うことができるのか」
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特区が認められたら−。穂坂氏の構想では、市長を総括責任者、教育長を責任者として明確化し、その下に20人程度の教育審議会をつくる。「教育への住民参加が、掛け声だけでなく本物になる」。教員採用も県ではなく市が行う。
教育委員会への不信がさらに高まったのは、北海道滝川市や福岡県筑前町などで相次いだいじめ自殺への対応がきっかけだ。
いじめ自殺などを隠そうとする教育委員会の体質は変わっていない。いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)の理事、小森美登里さんは、「子供たちの命を守る権限はどこにあるのか疑問だ」と話す。
小森さん自身、平成10年に当時、高校1年の長女、香澄さんをいじめによる自殺で亡くした。最近もいじめの被害者の親からの相談は学校での出来事を明らかにしようとしない学校や教委への不信がほとんどだという。
小森さんは「子供を亡くした親は、わが子に何があったか、事実と子供の痛みをせめて知りたい」という。だが同級生が書いた追悼文を学校が破棄した例もある。「学校や教育委員会はなかった状況をつくるために必死になっている。それでは再発防止の対策をたてられない。情報を共有し、子供たちの命を地域でしっかり守る体制をつくってほしい」と話す。
2年前、福岡県筑前町でいじめを苦に自殺した中学2年の森啓祐君の母、美加さんも「学校で何が起きたのか事実が分かることが子供たちを守る一つの方法だと思っている。遺族だけでなく、親は誰でも学校で何が起きているのか知りたいはず。学校側がどう対応したのかスムーズに分かるシステムをつくっていただきたい」と話す。
「教育委員会は最近、さまざまな批判を受けている…」。10月末、東京都内で行われた新任の教育委員を対象にした会合で、文部科学省の金森越哉初等中等教育局長は例年に比べ強い口調で委員のリーダーシップを求めた。
有識者らが就く教育委員は、本来、教育委員会事務局の仕事をチェックし、教育行政を主導しなければならないが、自治体によっては“お飾り”的存在だ。
続いて開かれた分科会では当惑する新人委員の声があふれた。「リーダーシップという話だが非常勤でどうやればいいのか」「仕事もある」「教育委員に選ばれたのは名誉だが、悩んでいる」…。
大分県の教員汚職事件や学力テストの成績公表問題など教委の体質や姿勢を問う問題が目立つが、いじめ問題でも批判された閉鎖性や無責任体質はなかなか変わらない。地域の教育を担う教育委員会について考える。
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