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2008年11月02日(日) 19時22分

問われる「強い米国」 流れ変える可能性も産経新聞

 【ワシントン=山本秀也】米大統領選は4日、投開票される。民主党候補のオバマ上院議員(47)がリードを保っている。ただ、米CNNテレビの世論調査(1日)では、共和党のマケイン上院議員(72)が差を1ポイント縮め6ポイント差に詰め寄った。米国経済がマイナス成長(四半期ベース)に転じ、長引く「テロとの戦い」も岐路に立つ。今回の選挙は、「市場主義」や、安全保障の強化により「強い米国」を目指してきたレーガン政権以来の政治哲学を問い直す機会ともなりそうだ。

 約8年間の共和党政権を率いたブッシュ大統領は1日、ラジオ演説で「わが国の将来にとって大切な決断を下すときだ」と述べ、国民に投票を促した。大統領選のほか、上下両院選でも民主党がリードしている最終版情勢については、「政党間の競争こそ健全な民主主義に不可欠だ」と述べるにとどまった。

 2004年の前回大統領選で地滑り的な勝利を収めたブッシュ政権も、現在は不支持率が7割前後。これには、共和党政権の継続をかけるマケイン氏も、選挙戦で「私は一匹狼だ」と述べ、現政権との違いを強調せざるを得なかった。

 だが、グローバリズムをめざす「市場主義」や、米国一国での武力行使を可能にする「強大な軍事力」など、80年代のレーガン政権から続く保守の大きな流れについては、現政権も、マケイン氏自身も「レーガン革命の一兵卒」を公言してきた。オバマ氏への支持拡大は、この米国政治の流れを変える可能性をはらむ。

 金融危機の発生後、「金融政策」「景気対策」が最大の関心事となった。大統領は公的資金による金融機関への資本注入を「あくまで暫定的な手段」と強調する。だが、オバマ氏は「金融危機を収束させることが当面、最大の課題だ」とし、政府による市場管理に軸足を置く構えだ。

 米国がこれまで世界を引っ張ってきた自由貿易は、国内産業の保護や規制緩和とも絡む選挙の争点だ。「公平な貿易取引」を掲げるオバマ氏は、輸入品の原産国に「高い環境基準」や「労働者保護」を求める。マケイン氏は伝統的な自由貿易派ではあるものの、それでも米紙ウォールストリート・ジャーナル(10月31日付)は「この選挙は自由貿易に冬の到来を告げるだろう」と論じた。

 イラク情勢の混迷は、06年の中間選挙で共和党に敗北をもたらした。その後、ブッシュ政権の兵力増派で同国の治安は大幅に改善し、マケイン氏も増派策を一貫して支持してきた。同氏は、選挙戦でこの先見性を誇ったが「皮肉にも増派策が成功したばかりに、安保問題は選挙の争点から遠のいてしまった」(11月1日付のウォールストリート・ジャーナル紙社説)。

 軍事力を背景にした一国主義に代わり、台頭の兆しをみせるのが「対話外交」や「国連重視」だ。オバマ氏はイラン首脳との会談も可能だとする対話派だが、一国主義を推し進めた現政権も、政権末期を迎えアフガニスタンの旧支配勢力「タリバン」の穏健派との対話を模索する動きをみせ始めている。

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