広島県が、一般有料道路の広島岩国道路(廿日市市—大竹市、16.2キロ)の山陽自動車道への編入と料金値下げに向けた要望活動を活発化させている。事実上は山陽道として機能しながら、「生い立ち」の違いから料金単価は山陽道の約1.6倍。政府が追加経済対策で高速道路料金の引き下げ方針を示したのを「積年の課題解消への好機」とし、国などへの働き掛けを強めている。
広島岩国道路の料金体系には複雑な歴史がある。もともと旧日本道路公団が廿日市市と岩国市を結ぶ国道2号バイパスとして計画し、1973年に着工した。この後に国が同区間に山陽道建設の施工命令を出したものの、用地買収の難航などから広島岩国道路の併用を決定。大野インターチェンジ(IC、廿日市市)—大竹IC間が開通した90年11月以降は、山陽道の1区間としての役割を担う。
ただ、路線ごとの独立採算で料金を徴収する一般有料道路と、全国一律のプール制をとる高速道路とでは料金体系が異なる。広島岩国道路の1キロ当たりの料金は山陽道より約60%も高い。
例えば、広島ICから東へ約47キロの本郷IC(三原市)までの普通車料金は1350円なのに、西へほぼ同距離の岩国ICまでは広島岩国道路を経由するため400円増の1750円となる。
こうした不公平感に追い打ちをかけたのは2005年の旧日本道路公団の民営化だ。当初は19年までと設定されていた料金徴収期間が、民営化に伴う料金体系の見直しで山陽道と同じ50年までに延長。割高な料金のまま、無料化の時期だけが31年も先送りされる「不合理極まりない事態」(広島県土木局)が生じている。
政府は現在、休日は「1000円乗り放題」にするなどの方針を打ち出しているが、県は「仮に広島岩国道路に割引が適用されても、山陽道との料金格差は残る」と主張。今後の政府の検討状況も見据えつつ、広島岩国道路を所有する日本高速道路保有・債務返済機構(東京)や管理者の西日本高速道路(大阪市)などにも見直しを働き掛ける。
【写真説明】広島県などが料金の引き下げを求めている広島岩国道路