来年度から始まる教員免許更新制の実施にあたっては、教員への信頼を回復するという原点に立ち返るべきだ。そのためには、入念な準備を怠ってはなるまい。
更新制では、国公私立を問わず、小中高校などの教員免許に10年の有効期限が設けられる。10年に一度、最低30時間の講習を受け、試験で修了認定を得なければ、免許は失効する。
講習を実施する各大学は今年度、本番に生かすため、「予備講習」を試行している。
文部科学省が今月まとめた各大学の報告書によると、同じ教科でも小中高校では内容がかなり異なるため、一緒の講習では、教える側にも受講する側にも不満が強く、効果的ではない。演習や実習を伴わない講義も多い。
受講者の評価を公表している大学のホームページを見ると、講習によって満足度に差がある。
更新制の目的は「最新の教育事情に合わせ教員の知識・技能を刷新する」とされている。だが、学校裏サイト対策、保護者への対応など、学校でいま問題化している事態に対処できる講習は少ない。内容の充実が求められよう。
対象は毎年10万人と見込まれている。大教室での一方通行の講義とならないよう、受講者数を適正な規模に絞ることも必要だ。
更新制は当初、不適格教員の排除を目的に検討されていた。しかし、不適格教員には、指導改善研修を義務づけるなど、他の方法で対処することになった。
だが、更新制でも厳正な修了認定は欠かせない。予備講習では、記述式問題で空欄やわずか数行の解答があったという。
国も、受講者の評価などに基づき講習の内容や質を点検し、修了認定の基準を精査するなど、責任を持つべきだ。
公立校教員には、都道府県教育委員会の10年経験者研修などが既に行われている。内容の重複を避けるには調整が必要だ。文科省は、更新制開始後の状況を踏まえて柔軟に見直し、将来的には一本化も検討すべきだろう。
受講料は、1人3万円程度とされる。法改正で義務づけられた新たな制度の講習であり、教員の費用負担が不要の10年研修との整合性も考えれば、国による負担が妥当ではないか。
更新制導入の背景には、教員への国民の不信感がある。講習で何を身につけるのか。取り組む教員の姿勢が、信頼回復への一歩となることも忘れてはならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20081029-OYT1T00803.htm