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2008年10月30日(木) 22時17分

【追加経済対策】景気下支えの効果を巡って反応分かれる産経新聞

 政府・与党は30日、事業総額26兆9000億円の追加経済対策を決定した。深刻化する金融危機に直面するなかで、日本経済の減速を食い止めることができるのか。エコノミストの評価はそれぞれの項目で分かれた。“総力戦”の様相を呈している経済対策だが、景気下支えの効果は未知数だ。

 多くのエコノミストが景気浮揚効果を期待するのが、過去最大規模の住宅ローン減税だ。三菱総合研究所の後藤康雄主席研究員は「住宅投資は減税に敏感に反応する」と評価する。住宅投資の拡大は家電といった耐久消費財の需要喚起などにも広く波及するため、効果は大きいとみる。

 金融機関の経営の健全性の目安となる自己資本比率の低下を防ぐための公的資金による資本注入や、自己資本規制の緩和を歓迎する声も多い。株価下落に伴う保有資産の劣化で金融機関の貸し出し余力がなくなれば、企業向け融資が細り倒産の増加や雇用削減に波及することが危ぶまれるからだ。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次主任研究員は、自己資本を予防的に増強できなければ「信用収縮が進む」と説明する。

 一方、「効果が薄い」(第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト)との指摘が多いのが、給付金方式に変更された定額減税だ。個人消費への波及効果は不透明で、京都大学大学院の吉田和男教授が「財政が厳しい中での“バラマキ”は目的が不明確だ」と指摘するなど、選挙を意識した対応との批判も多い。

 株の空売り規制も効果が疑問視されている。海外のヘッジファンドなどの過度な売り圧力を牽制(けんせい)できる一方で、空売りができなければ買い戻しもできず、株安に歯止めをかける効果は限定的といえそうだ。市場では「株の売買が滞るなど副作用の方が大きい」(JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト)との見方が支配的だ。

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