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2008年10月27日(月) 02時31分

<凶悪事件>指名手配容疑者の7割、5年以上逃亡毎日新聞

 全国の警察本部が指名手配している凶悪事件(殺人、強盗、強姦(ごうかん)、放火)の容疑者125人のうち、約7割にあたる87人が5年以上検挙されておらず、約2割の24人は10年以上も消息がつかめていないことが、警察庁の集計で分かった。容疑者が浮上しても刑事責任が追及できず、時効が近づく。

 警察庁によると、07年10月16日現在の指名手配容疑者は1933人。このうち、捜査重点は579人で、内訳は凶悪事件125人のほか、▽窃盗138人▽知能111人−−などだった。

 凶悪事件で、指名手配から10年以上逃走しているのは24人(殺人11人)、5年以上10年未満は63人(同33人)。殺人容疑で10年以上逃亡している11人は、▽95年3月の地下鉄サリン事件に関与したとされる元オウム真理教の高橋克也(50)、菊地直子(36)▽90年11月に沖縄市で警察官2人を射殺したとされる又吉建男(59)の各容疑者ら。97年8月、神戸市のホテルで5代目山口組若頭と市民1人を殺害したとされる財津晴敏(51)▽98年1月、群馬県内で一家3人を殺害したとされる小暮洋史(39)の両容疑者らも時効(04年までの発生事件は15年)が近づいている(共犯者が公判中の高橋、菊地容疑者は刑事訴訟法上の規定で時効が停止中)。

 北村滋・刑事企画課長は「犯人検挙に向け、全力を挙げて捜査しており、1人でも多くの指名手配容疑者の検挙に努めたい」と話している。【長野宏美】

 ◇解説…罪に問わない時効が助長

 「容疑者が指名手配された時は、すぐに逮捕されると思った。だけど今日か今日かと待っている間に15年が来てしまった」。90年12月に長女の生井宙恵(みちえ)さん(当時24歳)を殺害された母親の澄子さん(72)=札幌市=は05年に迎えた時効を振り返る。殺人事件で手配されている11人は手配から10年以上の長期逃亡者で、同じ悲しみを被害者に与える恐れがある。重点的に行方を捜すときだ。

 全国の指名手配1933人のうち、警察が力を入れている「捜査重点容疑者」は毎年100人超が検挙されているが、例年30人以上いる警察庁指定重要手配容疑者は、06年までの5年間に毎年1〜2人しか逮捕されていない。警察庁特別手配の元オウム真理教信者3人にいたっては、13年も逮捕されていない。

 警察庁は、逮捕者が増えない原因の一つに国民に「無関心」や「相互不干渉」の風潮が広まったことを挙げているが、生井澄子さんは時効を迎えるまで「どうやったら一般の人から情報を得られるか」と考え続けたという。自費で200万円の懸賞金をかけたのも「情報がほしい」との願いからだった。「逃げ切れば、罪には問われない」。そんな時効制度が、指名手配容疑者の逃走を助長している面もある。【石丸整】

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