2008年10月26日(日) 22時45分
NOVA破綻から1年 “ワンマン経営者”元社長は雲隠れ(産経新聞)
英会話学校「NOVA」(大阪市、破産手続き中)が大阪地裁に会社更生法の適用を申請してから26日で丸1年を迎えた。元受講生約30万人が前払いしたまま返還されない受講料が約560億円に上る、「戦後最大の消費者被害」となったが、元受講生の救済は進んでいない。一方、「ワンマン経営者」としてNOVAを率いた元社長、猿橋望被告(57)=業務上横領罪で起訴=は“雲隠れ状態”で沈黙を守ったままだ。
■説明求める被害者
「語学を学びたいという純粋な思いを踏みにじられたことに怒りを覚える」
約2300人の元受講生でつくる「NOVA生徒の会」(大阪市)のメンバーで、同市北区の会社員女性(35)は悲痛な声を上げる。
女性は外国人の親類とコミュニケーションを取りたいと平成15年10月にNOVAに入会。大阪・梅田校で英語とドイツ語のレッスンを受講していたが、突然の閉鎖。前払いした受講料は約70万円に上り、事業を引き継いだ「ジー・エデュケーション」(名古屋市)の「新NOVA」に登録した。しかし教室が遠くなって通いづらくなり、ドイツ語のレッスン数も大幅に減ったため足が遠のいた。
女性は「なぜこのような事態に陥ったのか。猿橋氏はきちんと説明した上で謝罪してほしい」と訴える。
■無罪主張も視野
猿橋被告は今年6〜7月、社員互助組織の積立金3億2000万円を流用したとする業務上横領容疑で逮捕、起訴された。その後、保釈されたが、公の場で一切説明していない。
関係者によると、現在は大阪市内のマンションで1人暮らしをしている。周囲に「受講生に迷惑をかけて申し訳ない。被害弁償も考えないといけない」と語り、資金繰りのため職探しをしているという。
一方、猿橋被告の弁護人は「被告自身も当時、会社を建て直すため金融機関から資金を借り入れるほど切迫した状況だった」と強調。刑事責任についても「社員の積立金を元受講生への返還金にあてたが、当時の金の流れをトータルにみれば“前借り”したという評価もあり得る」と違法性に疑問を呈し、今後の公判での無罪主張も視野に入れて準備を進めている。
一方、元外国人講師らへの賃金不払いを巡り、労働組合「ゼネラルユニオン」に加入する元講師2人が今月23日、労働基準法違反罪で書類送検された猿橋被告を不起訴とした大阪地検の処分を不当として検察審査会に審査を申し立てた。
■「継続」は3割弱
ジー社は昨年11月、NOVAから事業を引き継いだが、全国の元受講生約30万人の大半は救済されていない。
現在、ジー社は継承した126校を含む379校を展開しており、受講生の9割(約7万4000人)がNOVAからの継続組。しかし、経済産業省からの要請で入会金免除などの優遇措置を設けた2つの業界団体の加盟社約25社が受け入れた約1万人を含めても、受講を継続したのは全体の3割弱にとどまる。
語学学校との契約を巡るトラブルなどに対する行政側の対策も進んでいない。
近畿在住などの元受講生24人が今月17日、猿橋被告を含む旧経営陣や監査法人に前払い受講料約1600万円の返還を求め、大阪地裁に提訴した。破綻後、全国で初めての集団訴訟となった。
多額の受講料を事業資金に注ぎ込み、自転車操業を繰り返した「NOVA商法」。その是非が法廷で問われようとしている。
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