2008年10月26日(日) 21時08分
エンタメ化進む米大統領選 アラン・シュレーダー准教授に聞く(産経新聞)
日本でも大きな関心を集めている今回の米大統領選は「政治のエンターテインメント化がいっそう進んだ選挙戦」と指摘されている。政治家とセレブと呼ばれる有名芸能人の境界があいまいになってきたというのだ。両者には大衆の関心を引き付けなければならないという共通点があるものの、メディアでの扱われ方によっては足元をすくわれることもある。
「セレブリティ・イン・チーフ(最高有名人) ショービジネスはどうやってホワイトハウスを乗っ取ったか」などの著書で知られるノースイースタン大のアラン・シュレーダー准教授(ジャーナリズム)に聞いた。
——NBCテレビの政治風刺番組「サタデー・ナイト・ライブ」でコメディー女優のティナ・フェイさんが演じる偽ペイリン氏が大変な人気だ。本物のペイリン氏にどんな影響を与えているか
「フェイさんの物まねはペイリン氏にマイナスに働いている。問題なのはペイリン氏が自分のイメージを確立する前にフェイさんがペイリン氏のイメージを確立してしまったことだ。フェイさんは頭が空っぽで間抜け、大統領になる準備のできていない副大統領候補を演じている。(共和党大統領候補の)マケイン陣営がペイリン氏にメディアとの接触をあまり認めていないこともあって、このイメージはいまや多くの有権者に根付いてしまっている」
——なぜフェイさんの物まねはこんなに多くの関心を集めたのか
「それはペイリン氏が記者、コメディアン双方にとって(ネタとなる)多くの材料、要素をもっているからだ。彼女は若く、魅力的で、5人の子供の母親であり、ヘラジカの狩猟をするホッケー・ママという特徴をもっている。しかもほんの2カ月前までほとんどの米国人が彼女のことを知らなかった。それゆえ、マケイン氏が彼女をランニング・メート(副大統領候補)に指名したことは大きなサプライズだった」
——登場した当初はプラスのイメージが強かったが
「ペイリン氏が(テレビとの)インタビューをうまくこなせなかったことがフェイさんがパロディー化したペイリン像を創作するきっかけになった。いまや2人のイメージは切り離せないものになっている」
《CBSとのインタビューで外交経験について問われたペイリン氏はアラスカがロシアに隣接していることが自身の外交経験の一環になっていると回答。「ロシアのプーチン大統領が米国を目指すとき、まずどこへ向かうか。それはアラスカだ」「(狭い海峡で隔てられただけの隣の大国である)ロシアを見張るためにアラスカから貿易使節を派遣している」と発言した。フェイさんはこれをとらえ、「アラスカの人が朝起きて最初にすることはロシア人がうろついていないかどうか外を見ること。そして彼らが何でここにいるのかきちんと答えられなかったらシッシと追い払うのです」とギャグにした》
——今回の選挙戦では米国の政治文化とセレブ文化が同化したといわれているが
「著書にも書いたが、セレブと政治家の関係はこの何年もの間に変化、発展してきている。近年さらにこの変化が激しくなっている。米国の政治家はいまや、その重責に加え、エンターテイナーとしての役割も求められるようになってきている。私はこの同化が収拾がつかないほどになっているとまでは決して思わないが、政治家は、国を治めることより、ショービジネスでの振る舞いなどが重要になってしまうというような状況を許さないよう心すべきだ」
(ニューヨーク 長戸雅子)
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